2020年02月12日

『小説家を見つけたら』

『小説家を見つけたら』
(ガス=バン=サント:監督・2000年・アメリカ)

広場でバスケットボールをしている少年たちが、
むかいのたてものの、いちばんうえの部屋を気にしている。
自分たちを観察しているようだけど、姿はみせない。
ある日の夜、仲間たちがあつまって、
部屋へしのびこもうとするものの、
やっぱり気がひけて、けっきょく階段をのぼったのは
16歳の黒人少年、ジャマールひとりだった。
彼がしのびこんだ部屋には、
ふるい家具やテレビ、そして本がたくさんあった。
部屋のもちぬしがきゅうにあらわれ、
ジャマールをおどかしたため、
彼はあわててリュックをのこしたままにげだした。

つぎの日の夕方、たてものの下をあるいていたジャマールに
彼のリュックがなげかえされる。
荷物をしらべてみると、彼の創作ノートに
たくさんかきこみがしてあった。
おおくの批判にまじり、ところどころは
ジャマールのアイデアをほめてある。
部屋のもちぬしが気になったジャマールは、
こんどはドアをノックして、正式にたずねていった。

部屋にはひとりの老人がすんでいた。
あとからあきらかになるけど、
彼はむかし一冊の本をだしたきり、
世間から背をむけて生きる小説家、フォレスターだった。
彼は、はじめジャマールをじゃけんにあつかい、
もうここにくるなとおいかえすものの、
ジャマールがしつこくたずねるうちに
すこしずつふたりの会話がふえていく。
うつくしい文章をうみだすコツを
フォレスターはジャマールにつたえ、
彼のアドバイスのもと、ジャマールは文学の才能をのばしていく。

フォレスターにであうまえから、ジャマールには、
文学にかんするすぐれた才能があった。
学力テストで文学の才能をみとめられたジャマールは、
有名な私立高校へ学費免除でひきぬかれる。
この学校でもジャマールは、
バスケットと文学に非凡なちからをみせる。
ただ、この高校には、
自分のかたよった価値観で生徒たちをしばりつける
文学の教師、クロフォードがいた。
彼は、ジャマールがあまりにも完成度のたかい文章をかくので、
盗作にちがいないと頭からきめつける。
生徒の才能をはばたかせようとするのではなく、
逆にふみにじろうとするクロフォードがみごとに にくらしい。
彼はジャマールを学校からおいだそうとワナをはり、
もうすこしでジャマールは、
無実の罪をかぶり、退学するところまでおいつめられる。
作文の発表会の日、とつぜんフォレスターが学校にあらわれ、
きれいにジャマールへのうたがいをはらし、
クロフォードの俗物性が、おおくのひとのまえであきらかになる。

数学にたかい才能をしめす少年のはなし、
『グッド・ウィル・ハンティング』みたいだなー、
とおもってみていたら、おなじ監督だった。
『小説家を見つけたら』は、数学から文学に舞台をうつした
『グッド・ウィル・ハンティング』にもみえる。
クロフォード教授が自分の博識をひけらかそうと、
古典文学から有名なフレーズを引用すると、
ジャマールがことごとく出典をいいあてる。
『グッド・ウィル・ハンティング』では、
マット=デイモンが圧倒的な知識量により、
エリート校の少年を論破した場面をおもいだす。

フォレスター役のショーン=コネリーがしぶい。
いろいろと、立派なことをいいながらも、
フォレスターは、そとの世界へでられないまま
50年がたってしまった ひきこもり老人だ。
彼のちぢこまった頭とからだをほぐしたのがジャマールで、
年ははなれているものの、ふたりはおたがいに友情をかんじていた。
盗作ではないかという、ジャマールへのうたがいをはらしたのち、
フォレスターはふるさとスコットランドへ旅にでる。
これでめでたし めでたしかとおもっていたら、まだつづきがあった。
しばらくして、ジャマールのもとに弁護士があらわれ、
フォレスターが旅さきでなくなったとつげる。
そのさきは、ここにかかないほうがいいだろう。
余韻にみちたラストが印象的な作品だ。
弁護士役で でてきた かっこいいおにいさんが、
あとでしらべるとマット=デイモンだった。
ますます『グッド・ウィル・ハンティング』なのがうまい。

posted by カルピス at 22:29 | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする