2020年03月02日

『ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲』

『ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲』
(デビッド=カー:監督・2018年・イギリス)

「Mr.ビーン」のローワン=アトキンソンが主演。
糸井重里さんが ずいぶんまえの「今日のダーリン」で、
ただくだらないって、ほんとにいいなぁ

と とりあげていた。
よくよむと、糸井さんはまだ映画をみてなくて、
ポスターにのったローワン=アトキンソンの
まじめな顔つきを「思い出し笑いし」た
体験をかいているのだった。
いいなぁ、くだらなそうだなぁ、観たいなぁと、
さっそく過去のシリーズ作品を、2作探し出した。

という段階だった。

「Mr.ビーン」のわらいは、わたしのこのみとすこしはずれているけど、
『ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲』はおもしろかった。
こみあげてくるおかしさに、なんどか声をだしてわらっている。
ネットとかITがごくあたりまえの環境となっている時代に、
30年以上まえの装備でいどむイングリッシュ氏
(ネットがつかえないから、ふるい機材でたたかうしかない)。
中高年者は、現代社会からとりのこされていくさみしさを、
イングリッシュ氏の「活躍」により溜飲をさげる、
という構図かとおもってたけど、世代はあんまり関係ないみたいだ。
現代テクノロジーによわいおじさんが、
ぜんぜんわるびれずに仕事をするのがただおかしい。

ドタバタがうりの作品なので、ねむれなくなったイングリッシュ氏は、
睡眠薬とまちがえて、もちろん精力剤をのむ。
ちょうどそのとき、サイレンサーつきの銃を手に、
女性スパイがしのびこんできた。
絶倫になったイングリッシュ氏が、
彼女にとびつくのかとおもったけど、
さすがにそんな下品なふるまいはしなかった。
いきおいよくドアをあけたはずみに女性スパイはたおれ、
イングリッシュ氏はげんきいっぱいにディスコへくりだす。
まわりの客とは関係なしに、
自分流のダンスではげしくおどりはじめた。
つぎの場面で、いつのまにかディスコは朝をむかえている。
つかれきったDJがレコードプレーヤーのまえでいねむりをし、
フロアーのスタッフが淡々と部屋をそうじするなかで、
イングリッシュ氏はひとりでまだおどっていた
(おかしさを説明するのって、すごく野暮だ)。

イングリッシュ氏はわからないことがあると、
スパイでありながら、どうどうと公衆電話でMI-7にたずねる。
スマホをもとうとしないイングリッシュ氏にたいし、
だれもが「電話ができて便利なのに」というけど、
ぜんぜんきく耳をもたない。
通話機能さえ、イングリッシュ氏は否定している。
映画のラストで、敵方がおとしたスマホを
イングリッシュ氏が剣でつきさした。
スマホは、ふたことみこと声をあげてから、
ガックリと息をひきとる擬人化がおかしかった。

こうした作品がつくられるのも、ジェームス=ボンドシリーズという
イギリスならではの下地があるからだろう。
スパイはかっこよくて女性にもてるという、共通のイメージをいかし、
「ただくだらない」イングリッシュ氏のわらいがいきる。
ドタバタがいやみにならない微妙な線をまもり、
じょうずにあそびながら、おしゃれにふざけてつくられている。

posted by カルピス at 22:13 | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする