(木村元彦・集英社インターナショナル)
先日の記事にオシムさんのことをすこしかいたら、
たまたまその夜の「サンデースポーツ」で
『オシムの言葉』をとりあげていた。
2006年のサッカーW杯ドイツ大会は、
代表史上最強といわれていた日本なのに、
いいところなしのまま、グループリーグで敗退してしまった。
ジーコのあとに代表監督となったのがオシムさんで、
それまではジェフユナイテッド市原の監督を3年つとめていた。
弱小チームをナビスコ杯優勝へとみちびいたオシムさんの手腕は、
サッカー関係者の注目をあつめていたそうだけど、
代表戦ばかりみていたわたしはもちろんしらなかった。
そのオシムさんが代表監督にきまり、
それにともないうれだしたのが『オシムの言葉』だ。
番組では、著者の木村元彦さんと、
オシムさんの指導をうけた巻誠一郎さんが、
オシムさんのひととなりをかたっている。
木村さんは、ユーゴスラビア紛争の体験により、
あすどうなるかわからない人生において、
どれだけ前むきに人生を生きていけるかが彼の哲学にある。
とオシムさんのスタイルを表現している。
サッカーでいえば、ひいてまもってカウンター、ではなく、
リスクをおかして何かをかちとろうとするサッカーのほうが、
うつくしいでしょ、という価値観だ。
巻さんは、だれかのためにプレーすることを
オシムさんが評価してくれたとはなす。
サッカー選手を引退し、つぎのステージをかんがえたときに、
だれかのためにアクションをおこすのが 自分のスタイルだと、
障害者の就労の手だすけを 巻さんは はじめた。
信念をもって活動できているのは、
オシムさんのおしえがあったからという。
サッカーだけにとどまらず、生きかたにまで影響をあたえるのが
オシムさんのプレースタイルだ。
番組の映像では、ジェフの選手たちをおしえる
15年まえのオシムさんがうつしだされる。
試合で納得のいかないプレーを目にすると、
ペットボトルを地面にたたきつけていかりをぶつける。
ナビスコ杯をかちとると、テレかくしに、
茶化すような表情でシャーレを手にする。
選手たちがどうあげしようとオシムさんにちかづくと、
もっともらしい顔をして、かたくなにこばむ姿がおかしかった。
表情をゆたかにかえ、おちゃめに感情をあらわす姿がなつかしい。
本書のこまかい内容はわすれてしまったけど、
この本により、わたしはいっぺんでオシムさんのファンになった。
そして、オシムさんがすすめるサッカーも
おおくのひとのこころをとらえた。
オシムさんは2007年の11月に脳梗塞でたおれ、
代表監督としての仕事からはなれてしまった。
オシムさんがつくる日本代表の完成形をみれなかったのが
かえすがえすも残念でならない。