1996年のウィンブルドン女子準決勝、
グラフと伊達の試合が「伝説の名勝負」として放映された。
このごろはあたらしい番組をつくれないせいか、
再放送とか、むかしの名試合がおおい。
伝説の名勝負というからには、伊達がいい試合をしたのだろう。
たのしみにみはじめたけど、
でも、1セット目は、グラフのつよさを徹底的にみせつけられた。
伊達がむつかしいボールになんとかおいついても、
さらにそれをうわまわるスーパーショットでとどめをさす。
伊達がひろってもひろっても、得点をあげるのはグラフだ。
2人とも、もちろんうまいのだけど、
たとえばフォルトのボールをどうさばくかなど、
ゲームと関係ないところにあらわれるふたりの達人ぶりがかっこいい。
2セット目にはいっても、あいかわらずグラフのペースだ。
ただ、だんだん伊達のうごきがつながるようになる。
1、2ゲームはうしなったものの、
そのあとつづけて6ゲームを伊達がとる。
試合のくみたてがうまく、グラフを左右にふっておいて、
重心がうつったのと逆の方向にボールをうちこむ。
グラフのサーブは驚異的なスピードだけど、
この日はなかなか第1サーブがきまらない。
反対に、伊達のフォアへのふかいリターンが効果的だった。
グラフのいらいらがまし、
うまくいかないなーという表情がみてとれる。
試合のとちゅうで観客席から
「グラフ、ぼくと結婚して!」と声がかかる。
場内にわらいがわきおこり、グラフもほほえみをうかべ、
「お金はいくらもってるの?」とかえす。
これでまたわらいがおこったのだけど、
伊達はこのとき「わたしじゃだめ?」
といおうとおもっていた、とネットにでていた。
シャイなので、くちにできなかったそうだ。
試合ちゅうの静寂にたいし「サンキュー」と
アナウンスがあるテニスにおいて、
こんな場面がうまれるのだから、
さすがはウィンブルドン、というかんじ。
2セットがおわったところで日没順延となり、
3セット目は翌日にもちこす。
この日のグラフはサーブがさえ、かんたんにキープする。
おたがいに2つずつゲームをキープしたあと、
グラフはブレイクをはさみ3ゲームつづけてとる。
1ど目のマッチポイントはだてがキープしてのがれたものの、
つぎのゲームはあっけなくおとし、6−3でやぶれた。
2セット目でみせたねばりが この日は再現できなかった。
「伝説の名勝負」だったのは2セット目だけで、
のこりはずっとグラフが主導権をにぎっていた試合だ。
それだけに、伊達のいきおいを3セット目にもちこせなかった
日没順延のあつかいが残念だった。
24年まえのこの試合を、わたしはまったくおぼえていない。
新型コロナウイルスの影響で、
テレビとラジオの番組づくりがむつかしくなっており、
そのおかげでグラフと伊達のつよさがよくあらわれた
「伝説の名勝負」をたのしめた。
伊達選手がえんじた2セット目の驚異的なねばりは
「伝説の名勝負」の名にあたいする。