風呂場の壁にたくさんの羽蟻がいた。ギョッとするぐらいたくさん。
シャワーのお湯をかけるとすぐに壁からおちて、
排水溝にすいこまれていく。
そのあと、もういちどそんな日があった。
さすがに気もちがわるくなり、ネットでしらべると、
シロアリにまちがいなさそうだ。
連休ちゅうだったで、やすみがあけてから
どこかの業者へ相談することにした。
ネットをみると、24時間いつでも電話OK、という会社があった。
1つの事務所がすべての電話をいつでもうけつけ、
お客のすんでいるところをたずねてから、
ちかくの事業所に依頼をまわす、というやり方のようだ。
しばらくしてから となりの町にある会社から連絡があった。
さっそく家にきてもらい、床下の状態をみてもらう。
シロアリがどうこうより、湿気がひどくカビだらけなのだそうだ。
シロアリの駆除だけでなく、換気をよくするための機械が必要で、
消毒代と換気扇をあわせて50万円弱かかるとみつもられた。
シロアリがでたからといって、すぐに駆除をかんがえるのは、
たとえば健康診断でガンがみつかり、
あわてて手術をしてきりとろうとするのとおなじだ。
ガンがうまれたのは、それなりの理由があったのだから、
敵対視するのではなく、生活をみなおすことも必要だろう。
シロアリを悪ときめつけ、家の敵として排除するのはいかがなものか。
シロアリもまたひとつの環境なのだから、
シロアリとの共存をはかるのが、ほんとうは筋だろう。
演出家の宮崎駿さんと、SF作家のカレンバックさんとの対談で、
宮崎さんが
きのう家内から仕事場に電話がありましてね。庭に枯れた丸太があるんですが、そこから羽蟻がいっぱい出てきて、いま飛び立とうとしているというんです。これは燃やすべきかどうか。僕は燃やすなっていったんです。家内は、近所とか自分の家に飛んできて土台を食い荒らすっていうんですよ。僕は家はつぶれたっていいじゃないかっていったんですけど、家に帰ったら、女房が「燃やしたわよ」って(笑)。
とはなしている。
30年まえに、この対談をよんだとき、
環境にたいする宮崎さんのこの態度にすっかり感心したのだけど、
じっさいに自分の家でシロアリをみてしまったら、
「家はつぶれたっていいじゃないか」
とはとてもおもえなかった。
自分のことになると、すぐに冷淡な独裁者になってしまう。
宮崎さんの世界観は腐海の森を生みだし、
単純なわたしは業者さんまかせの対応しかできない。
家にきてくれた業者の方はとてもいい対応をしてくれた。
50万円、といわれても、納得できる説明だったし、
調査のあいだにココ(うちのネコ)が顔をだしたら、
自分の家にもネコが何匹もいて・・・、とはなしてくれた。
こわがりのココがいつになく気をゆるし、
そのひとのところへいってからだをさわらせる。
ココのおかげで業者さんを信頼でき、
すっきりした気もちで施工の日をきめる。
シロアリのみなさんにはもうしわけないけど。