車のなかでラジオ番組の「音楽遊覧船」をきいていたら
映画『タイタニック』の主題歌がリクエストされた。
1997年に公開されたというから、もう23年もまえの作品だ。
『タイタニック』みたいな超大作は、
どうしてもななめにかまえてしまい、
公開したときには みずにすませることがおおい。
『タイタニック』がもうすぐ公開されるというころ、
わたしがつとめていた介護事業所に、
見学と体験をかねて中学生のひとクラスがきていた。
牛乳パックをつかった紙すきをいっしょにしていたら、
ひとりのおしゃべりでげんきのいい男の子が、
こんどくる『タイタニック』についてはなしだした。
主演のディカプリオの魅力、
監督のジェームズ=キャメロンが
これまでにつくってきた作品のおもしろさ。
新作の『タイタニック』が、どれだけすごい作品か。
あまりにも熱のはいったおしゃべりなので、
大作映画にはいかない主義のわたしも、
では、みてみようか、という気になった。
23年たったいま、内容については断片しかおぼえていない。
さむさによわいわたしは、
つめたい海にしずんでいくディカプリオをみて、
ああいう死に方はいやだとおもった。
船がしずむとわかっていながら、
最後まで演奏をつづけた音楽家も印象にのこる。
じょうずにつくられた作品で、映像の迫力と、
主演のふたりがむすばれずにわかれた場面など、
ふかく満足して映画館をでたようにおもう。
はなしをもとにもどすと、
車のなかに『タイタニック』の主題歌がながれ、
いっしょにのっていたひとが、「ポーランド」といった。
ポーランドから出航したはなし、と記憶していたらしい。
「いや、ポーランドではなくアイルランドでしょ」
とわたしはわかったようなことをいった。
家にかえってしらべると、イギリスのサウサンプトンを出発し、
ニューヨークをめざした航海ではないか。
よくしっているひとがきいてなくてよかった。
わたしに『タイタニック』をみるようすすめてくれた
男の子は、どんなおとなに成長しただろう。
いまは30代後半になっているはずだ。
自分が興味をもっているものについて、
初対面のおとなにも、熱心にかたる素直さを
いまもたもっていてくれたらうれしい。
『タイタニック』というと、ディカプリオよりも、
あの中学生のことがあたまにうかぶ。