『戦争は女の顔をしていない』(小梅けいと・KADOKAWA)
原作は、500人以上のソビエト従軍女性を取材したもので、
本書は小梅けいとさんによる、その漫画版だ。
漫画版のちかくに、原作もおいてあったけど、
第二次世界大戦におけるソビエト人女性兵のはなしを、
いきなり文章でよんでもわたしには想像しにくいかもしれない。
まず、漫画版のほうをよんでみよう。
第二次世界大戦におけるソビエトの被害者数は、
2000万人とも3000万人ともいわれている。
本書のおわりにあるコラム「大祖国戦争」を
監修の速水さんがかいており、
それによると軍人と民間人をあわせ、2700万人がなくなったという。
当時のソビエトの人口が1億9000万人なので、
人口の14%をうしなったことになる。
ドイツは800万人、日本は300万人なので、
ソビエトはけたちがいの犠牲をだしている。
独ソ戦は、歴史的にも類をみない戦争だったのだ。
女性の兵士が、軍隊においてどれだけ一般的かはしらなけど、
ソビエトでは、はやくから女性を戦場におくりこんでいる。
本書をよんでいると、映画『ロシアンスナイパー』をおもいだした。
狙撃兵として、300人以上のドイツ兵をうちころした女性が主人公だ。
ソビエト側からえがかれた戦争映画はみたことがないので、
おおくの犠牲者をだした対ドイツ戦につよい印象をうけた。
なによりも、ソビエトでは、
女性兵がそれほど特別な存在ではなさそうだった。
味方の男性兵士からも差別の目をむけられながら、
過酷な戦場で、主人公の彼女は 自分がするべき任務をはたす。
本書の第一話は、洗濯部隊のはなしだ。
女性だけからなるこの部隊は、
戦場にでかけ、ひたすら洗濯する。
まともな石鹸がないので、手があれて、爪がはがれたりする。
これまでみた映画に、洗濯部隊がでてきたものはない。
そういえば、ほかの国の兵士たちは、
よごれた軍服をどうやってあらっていたのだろう。
第三話では、ソビエト兵が「ロシア兵魂」を発揮して、
捕虜にあたたかい食事をわける場面がでてくるけど、
独ソ戦ではありえないような気がする。
映画にでてくるソビエト兵は、
あたたかみのないひとばかりだから、
そんなふうにおもいこまされているのだろうか。
ぜんたいとしては本書をおもしろくよんだけれど、
絵はそんなにうまくなく、なによりも、
ソビエト人をかくのになれていないかんじで、
少女漫画的な人物がえがかれている。
それでも、女性たちの愛国心と、
女性兵ならではのたいへんさがよくつたわってくる。
本書により、ソビエトの従軍女性をすこしはしることができた。
つづきは原作でよんでみたい。