配偶者が白内障の手術をうける。
飛蚊症が気になって眼科へいくと、白内障だといわれたそうだ。
彼女はいま60歳で、白内障には はやいようにおもえる。
お医者さんがいうには、40歳以上のひとの9割は、
気づいているか、いないかのちがいだけで、
すでに白内障にかかっているらしい。
いずれ手術をしなければならないのなら、
はやめにきれいにみえたほうがいいですよ、
みたいなころし文句をお医者さんにいわれ、
配偶者は手術をきめた。
手術はきのうだった。
白内障の手術なんて、かんたんなものだろうと、
たかをくくっていたのに、お医者さん・スタッフ全員で
10人ぐらいのチームによって とりおこなわれている。
もっとも、手術をうけたのは、配偶者だけでなく、
5人がつぎつぎに手術室によばれている。
手術じたいは20分で、ぜんぜんいたくなかったそうだ。
白内障の手術は、片方ずつすすめるので、
きのうの夜は、左目に眼帯をして家にもどってきた。
みためには、けっこうたいへんそうだ。
本人も、もっとかるい術後だとおもっていたのに、
こんなにおおごとなら、もう片方の目はどうしようかな、
とまよっていた。それほどたいへんだったのだ。
でも、きょうまた病院へゆき、眼帯をとられたら、
これまでとまったくちがう世界がひろがっていたという。
白内障の手術のあと、劇的によくみえるようになった、
というはなしをよんだことがあるけど、
彼女にも、その圧倒的な変化がおとずれたのだ。
自分がその体験をしてないと、どんな世界がひらけたのか
まったく想像できない。
とにかく、配偶者はものすごく感激していた。
子どもはこんな世界をみているのか、なんていう。
それまでは、みえるものに、白いモヤがかかっていたそうだ。
それがふつうの状態だから、みえにくいとおもわない。
手術をして、どれだけみえてなかったのかに 気づいたという。
シワや、皮膚のおとろえがよくみえてこまる、ともいっている。
ブラウン管テレビから、液晶テレビにかえた、
ひとむかしまえの消費者、みたいなものだろうか。
気づいてないだけで、わたしも白内障がすすんでいる口にちがいない。
配偶者をみならって、はやめに手術をうけたほうがいいだろうか。
ただ、どの患者さんも、配偶者のように
うまくみえるようになるとはかぎらないらしい。
ほとんどの場合うまくいくけど、
ときにはそうならないこともある。リスクはつねにある。
そんなはなしをきくと、とくにこまっていないいま、
わざわざリスクをおかさなくてもいいようにおもう。
わたしはまちがいないく飛蚊症で、
あちこちに黒い糸くずがみえる。
蚊だとおもって、たたこうとすることもよくある。
年をとってから冬の夕方は、ものすごくくらくかんじる。
みえにくいので、運転をしているとあぶなくてしょうがない。
自覚症状としては、そのふたつが目についてのわたしの老化だ。
老化だから、ま、いいか、とおもっている。
配偶者はあかるい顔で、よくみえるようになった目のことをはなす。
めでたし、めでたし。
無事に手術がうまくいき、彼女の配偶者であるわたしもよろこんだ。