『クロールー凶暴領域ー』
(アレクサンドル=アジャ:監督・2019・アメリカ)
フロリダの町にハリケーンがちかづいてきた。
はげしい雨に町は水びたしとなる。
連絡がとれない父親を心配し、
女子大学生のヘイリーは、家のようすをみにいく。
地下室で、ようやく父親をみつけたけど、
地下室にはワニが何匹もはいりこんでいた。
地下室だけでなく、池みたいになったとおりにも、
ワニがうじゃうじゃいる。
ストーリーはかんたんだけど、家のなかやまわりを、
ワニがうようよおよいでいる、という設定がおっかない。
まえに『ワニの町へ来たスパイ』というミステリーをよんだ。
こちらはルイジアナ州が舞台で、ストーリーにワニがからんでいる。
アメリカ南部の町は、そんなふうに、
ワニが身ぢかな存在なのだろうか。
ヘイリーは、やっとみつけたお父さんを、
地下室からたすけだそうとするけど、
ワニが何匹もいるので、うっかりうごけない。
おれが排水管をたたいてワニの気をひくから、
おまえはおよいで階段までいけ、なんて
お父さんが提案していたけど、
ちょっとあぶないんじゃないかとおもう。
そのすこしあとでは、ワニは水しぶきに反応するので、
水しぶきをたてなければ大丈夫だ、といいながら、
とおりのむこうにうかんでいるボートを、
ヘイリーにとりにいかせたりする。
はじめはぬき足さし足でヘイリーはすすんでいたのに、
とちゅうから「いそいでおよげ!」に方針がかわる。
けっこうテキトーな指示をだすおとうさんだ。
そもそも、いくら水泳選手でも、
服をきたかっこうで、ワニよりはやくはおよげない。
ただ、作品の冒頭に、ヘイリーが水泳大会でおよぐ場面があり、
あれぐらいはやくおよげるひとなら ひょっとして、
とおもわせるから、わかい水泳選手をヒロインにすえたのはうまい。
はじめのころヘイリーは、半分水につかりながらワニからにげていた。
それが終盤になると、ワニとおよいで勝負、にかわってくる。
あいてがサメだと、およいでにげるのはぜったい無理だけど、
ワニだったらなんとかなるような気がする。
何匹のワニにおわれながら、必死でにげるヘイリーがリアルだ。
もと水泳選手だったわたしだけど、
いまではきわめてゆっくりしかおよげない。
冒頭の水泳大会で、選手たちがみせたおよぎはほんものだった。
きれいで迫力のあるクロールをみて、
この映画への評価があまくなったみたいだ。