名画は、たいへんにありがたいものらしいけど、
やたらと敷居がたかくかんじられ、
わたしにはさっぱりわからない芸術だ。
わかいころ、オルセー美術館・プラド美術館
・ナショナルギャラリーをおとずれ、
たくさんの作品を「みた」経験があるのに、
ほとんどなにもおぼえていない。
いったいこの絵はなにをいいたいのかがわからなくて、
ありがたいはずの名画鑑賞が、たいくつな時間になる。
わたしだけでなく、おおくのひとも
にたような感想をもつのではないか。
そうしたタイプのわたしたちに、
この本はぐっと名画の敷居をさげてくれ、
そんなふうなみかたでいいのなら、
わたしにも名画をたのしめるかも、という気にさせてくれる。
この本は、「#名画で学ぶ主婦業」
とハッシュタグをつけ、
主婦業を実践ちゅうの女性たちが
名画にツイートしたものをまとめたという。
表紙にもとりあげてあるのが、
「来週月曜日は給食はありませんのでお弁当をもたせてください。」
という学校からの手紙を当日朝息子のランドセルから発見。
「我輩はたぶん猫」さんが名画「マラーの死」をみたときに、
そんなインスピレーションがわいてきたのだという。
いちどそんなつぶやきをよむと、
それ以外のなげきをおもいつかなくなる。
「見知らぬ女」(イワン=クラムスコイ)につけられた
私もう去年 役員やったから
もおかしい。
きょねんやったから、ことしはぜったいにわたしじゃない、
と確信にみちたドヤ顔は、ほんとうに
きょねんに役員をやった女性におもえてくる。
名画とわたしとの距離が、いっきょにちぢまった。
名画へのツイートとリプライ、
そして、その名画についての解説から本書はなっており、
名画にふれ、主婦業から名画をみて共感しながら、
解説をよむと教養まで身につけらえるという構成だ。
主婦業という、おなじ境遇にある女性たちが、
たのしみながら名画にかくされた「さけび」をあぶりだしている。