2020年08月26日

『平畠啓史 Jリーグ56クラブ巡礼2020』

『平畠啓史 Jリーグ56クラブ巡礼2020』
(平畠啓史・ヨシモトブックス)

タイトルどおり、Jリーグの全56クラブについて、
平畠さんが1本ずつ記事をかいている。
北海道コンサドーレ札幌からはじまり、
日本列島を縦断してFC琉球にたどりつく。
おなじ著者による『今日も、Jリーグ日和。』と
どうちがうかといえば、「Jリーグ日和」のほうは、
Jリーグサッカーについて、平畠さんが
かんじたことをそのままかいたエッセーなのにたいし、
「56クラブ巡礼2020」は、2020年のシーズンを対象に、
Jリーグに加盟している全クラブについて、
そのクラブの設立や現在の位置づけ、
そして地域でどのように愛されているかを、
平畠さんがインタビューでききだしている。
取材にえらぶのは 選手ばかりではなく、
平畠さんがキーパーソンとかんがえる、
場内アナウンサーだったり、サポーターだったり、
チアガールだったりするからとてもリアルだ。
川崎フロンターレの回は、
選手がのるバスの運転手さんがとりあげられている。
有名選手を全面にだせば、本はうれるだろうけど、
平畠さんがねがっているのは、それぞれの土地に根をおろし、
愛するチームをもりたてているひとたちから
チームにたいするおもいをききだすところにある。
よんでいると、どのチームのはなしも
ひとりひとりの人生がからんでくるだけにおもしろい。
 現在もピッチに立ち、スコアを動かせる選手、過去にスコアを動かしていた選手、自らはサッカーに関わっているつもりがなくても、関わってしまっているうどん屋のおばちゃん、それぞれのドラマにそれぞれの主役が存在し、Jリーグには無数の物語がある。

わたしがすむ島根には Jリーグのクラブがなく、
JFLの「松江シティFC」が J3いりをめざしている段階だ。
Jリーグで地理的にいちばんなじみがあるのは、
おとなりの鳥取県にある「ガイナーレ鳥取」となる。
本書で紹介されているのは、島根県松江市にすむ
フリライターの石倉利英さんだ。
中国5県のサッカー(Jリーグから高校性まで)を取材し、
メディアに提供しているそうだけど、
島根にすんでいながら、わたしは石倉さんの存在をしらなかった。
平畠さんのすばらしさは、日本サッカーをささえる
そうしたひとたちの熱意をすくいあげ、紹介するところにある。

本書は、取材というよりも、
たのしんではなしをききだしたら、自然にできあがった、
みたいな印象をうける。平畠さんならではの いい仕事だ。
登場するすべてのひとたちは、応援しているチームなくして
自分の人生はない、というほど おおくのエネルギーをささげている。
そうした熱意はなかなかおもてにはでてこずに、
地元でうずもれたままになりやすい。
ふだんはかくれた存在であるひとに光をあて、
興味ぶかい一冊としてまとめた平畠さんに 拍手をおくりたい。
おそらく本書は、サッカーがすきなすべてのひとにささげられている。

posted by カルピス at 21:39 | Comment(0) | サッカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする