(平畠啓史・ヨシモトブックス)
タイトルどおり、Jリーグの全56クラブについて、
平畠さんが1本ずつ記事をかいている。
北海道コンサドーレ札幌からはじまり、
日本列島を縦断してFC琉球にたどりつく。
おなじ著者による『今日も、Jリーグ日和。』と
どうちがうかといえば、「Jリーグ日和」のほうは、
Jリーグサッカーについて、平畠さんが
かんじたことをそのままかいたエッセーなのにたいし、
「56クラブ巡礼2020」は、2020年のシーズンを対象に、
Jリーグに加盟している全クラブについて、
そのクラブの設立や現在の位置づけ、
そして地域でどのように愛されているかを、
平畠さんがインタビューでききだしている。
取材にえらぶのは 選手ばかりではなく、
平畠さんがキーパーソンとかんがえる、
場内アナウンサーだったり、サポーターだったり、
チアガールだったりするからとてもリアルだ。
川崎フロンターレの回は、
選手がのるバスの運転手さんがとりあげられている。
有名選手を全面にだせば、本はうれるだろうけど、
平畠さんがねがっているのは、それぞれの土地に根をおろし、
愛するチームをもりたてているひとたちから
チームにたいするおもいをききだすところにある。
よんでいると、どのチームのはなしも
ひとりひとりの人生がからんでくるだけにおもしろい。
現在もピッチに立ち、スコアを動かせる選手、過去にスコアを動かしていた選手、自らはサッカーに関わっているつもりがなくても、関わってしまっているうどん屋のおばちゃん、それぞれのドラマにそれぞれの主役が存在し、Jリーグには無数の物語がある。
わたしがすむ島根には Jリーグのクラブがなく、
JFLの「松江シティFC」が J3いりをめざしている段階だ。
Jリーグで地理的にいちばんなじみがあるのは、
おとなりの鳥取県にある「ガイナーレ鳥取」となる。
本書で紹介されているのは、島根県松江市にすむ
フリライターの石倉利英さんだ。
中国5県のサッカー(Jリーグから高校性まで)を取材し、
メディアに提供しているそうだけど、
島根にすんでいながら、わたしは石倉さんの存在をしらなかった。
平畠さんのすばらしさは、日本サッカーをささえる
そうしたひとたちの熱意をすくいあげ、紹介するところにある。
本書は、取材というよりも、
たのしんではなしをききだしたら、自然にできあがった、
みたいな印象をうける。平畠さんならではの いい仕事だ。
登場するすべてのひとたちは、応援しているチームなくして
自分の人生はない、というほど おおくのエネルギーをささげている。
そうした熱意はなかなかおもてにはでてこずに、
地元でうずもれたままになりやすい。
ふだんはかくれた存在であるひとに光をあて、
興味ぶかい一冊としてまとめた平畠さんに 拍手をおくりたい。
おそらく本書は、サッカーがすきなすべてのひとにささげられている。