アメリカの作曲家、ジョン=ケージについてはなしていた。
いろいろ革新的な曲をつくったひとなのだという。
鈴木大拙さんの講義をコロンビア大学できき、
禅のかんがえ方にふかい感銘をうけたらしい。
人間がああだこうだかんがえて曲をつくるのではなく、
作曲や演奏の過程に偶然性をいれこみ、
どんな曲になるか、つくるひとも、演奏するひとも、
きくひとも、まったくわからない曲を
「偶然の音楽」としてつくった。
そのなかでも有名なのが「4分33秒」という曲で、
第1楽章も、第2楽章も、第3楽章も、
すべて楽譜は「TACET(休み)」となっているそうだ。
「TACET(タセット)」とは、音楽用語で「比較的長い間の休み」を意味しますが、それが3楽章全ての楽器の譜面に書き込まれおり、楽譜が意味するところは“休み”だけと言う事になります。
しかし、「“休み”だけ」と言っても、聴衆を前にして、指揮者は指揮台へと登り、演奏者はしっかりとステージに出て演奏姿勢へと移ります。
ところが、楽譜に書かれているのは“休み”のみですので、結局、「4分33秒」の間、全く演奏する事無く曲は終了し、指揮者と演奏者は聴衆に対して一礼し、聴衆は「4分33秒」の無音の音楽に対して拍手を送ります。
ー薮田翔一氏のサイトよりー
https://shoichi-yabuta.jp/beginners/contemporary/john-cage-433.html
楽譜には「休み」とあるだけ。
指揮者と演奏者がいるのに、なにも演奏しないなんて。
ユーチューブで、じっさいの「演奏」をみた。
大オーケストラが舞台にあがってきて、
はじめに女性のバイオリン奏者がかるく音あわせをした。
それだけ。
あとは、指揮者のうごきがすこしあるけど、
演奏はおこなわれない。楽譜になにもないのだからそれが正解だ。
そのまま なんの演奏もなく4分33秒がすぎ、
指揮者が女性バイオリニストと握手をかわすと、
聴衆から拍手がおくられる。
オーケストラ全員がたちあがり、客席にむかって礼をした。
ものすごく不思議な「演奏」だ。
「4分33秒」は、楽譜もCDも販売されているというからすごい。
クラシック音楽への強烈なアンチテーゼなのだろう。
人間の知恵などに、たいして価値をおかず、
完璧をめざさず、不完全でも不自然でもいいじゃないか、
みたいなかんがえ方にわたしはひかれやすい。
モーツァルトやベートーヴェンとはまったくちがう方向性だけど、
ジョン=ケージもまた天才というべきだろう。
ジョン=ケージの曲は、一般的にいう音楽からおおきくはなれている。
世のなかに、こんな作曲家がいたなんて、おどろくしかない。