2020年11月09日

『スウィート・ノベンバー』つっこみどころは シャーリーズ=セロンの魅力で なかったことに

『スウィート・ノベンバー』
(パット=オコナー:監督・2001年・アメリカ)

広告会社につとめるネルソン(キアヌ=リーブス)は、
目のまえの仕事に没頭し、生活をたのしむ気もちのゆとりがない。
運転免許を更新するためにおとずれた試験場で、
ぐうぜんサラ(シャーリーズ=セロン)とであい、
彼女に自分の孤独なくらしをみぬかれる。

あなたのちからになるから、1ヶ月だけ恋人になろう、
とサラがネルソンにもちかけてきた。
あなたとは、11月だけの関係だと。
ただし、そのあいだは自分といっしょにくらし、
仕事をしてはいけない、という条件つきだった。
はじめは、なにかもくろみがあって
自分にちかづいてきたのかとネルソンはおもっていたけど、
のびのびとたのしそうに生きるサラをみているうちに、
だんだん彼女の魅力にひかれていった。
ふたりとも、はじめての恋におち、
なんとかハッピーエンドにおわらないかと、
わたしはいのるようにラストをみつめる。

自由奔放に生きるサラがたのしくて、
とちゅうにながれるエンヤの曲もうつくしく、
いいかんじで作品にひたる。
あとからふたりの会話をおもいだしながら、
ゆっくり散歩をしたくなる映画だった。
なんてしっとりした気分になって、
あとからウィキペディアをのぞいてみると、
なんと、この作品は第22回ゴールデンラズベリー賞の
最低主演男優賞・最低主演女優賞・最低リメイク賞に
ノミネートされていたのだった
(受賞ではなく、ノミネートだけらしい)。
そういわれると、あれだけいい印象をもってたくせに、
けっこうつこみどころのおおい作品だった気がしてきた。

・ふたりのであいに無理がある。
 運転免許の試験場で、エリートのネルソンが
 ひとにこたえをおしえて、というわけがない。
・ありえない偶然
 まえの月の恋人は、サラのアパートの隣人だった。
 そして、彼は広告業界のひとで、その会社は、
 ネルソンがつとめていた会社と、ライバル関係にあった。
・サラの性格に矛盾
 自由をうばうからと、携帯電話や時計をきらうサラなのに、
 ネルソンから食器洗機をおくられると すんなりよろこぶ。
・サラはじつは難病にくるしんでいると、
 ストーリーが唐突に展開する。

映画にリアリティーをもとめるわたしなのに、
まるでリアリティーのない典型のような作品だ。
でも、だからといって、つまらなかったわけではない。
つっこみどころのマイナスをさしひいても、
サラをえんじたシャーリーズ=セロンの魅力はおおきい。
とちゅうでながれるエンヤの「Only Time」もぴったりだった。
もっとも、エンヤの曲は、どんな作品につかわれても、
しっとりしたムードをつくってくれる万能薬だ。
ゴールデンラズベリー賞のノミネートだって
気にすることはない。
サラが恋人との関係を、1ヶ月にかぎるのは
彼女ならきっとそうするだろう、と
シャーリーズ=セロンはおもわせてくれた。
こんな調子のいいストーリーでも、
さいごまでひっぱってくれたのだから、
ふうがわりな女性が自由に生きる作品に
わたしはよわいみたいだ。

posted by カルピス at 21:48 | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする