近所にあるイオンでかいものをする。
イオンといっても、駐車場が20台分ほどしかない、
かなりちいさなお店だ。
レジで精算をまっていたら、
わたしがえらんだワインのボトルを指さして、
「これおいしいですね」
と女性の店員さんにはなしかけられた。
チリ産の、税こみ630円ほどの安ワインで、
わたしはほとんどこればかりをのんでいる。
きゅうな声かけにおどろきながら あいづちをうつと、
「やすくて のみやすいし」と かさねていわれる。
客であるわたしにたいし、とても自然な声かけで、
わたしはいっぺんにうれしくなる。
ぱっとこころがはれわたったのをかんじた。
スーパーのレジというと、機械的な対応で、
挨拶にしても、お客のこころにとどかないような
ただのかけ声にすぎない「いらっしゃいませ」がほとんどだ。
こんかいのように、個人的にはなしかけられることはまずない。
わたしの心理をさぐってみると、
きれいな女性からの声かけだったのがおおきいようだ。
何年かまえ、ほかのスーパーで黒霧島をかったとき、
男性の店員さん(わたしより年上)に、
「芋焼酎はこれのもんですね」といわれたことがある
(すきなお酒をかわれると、店員さんは
お客になにかはなしかけたくなるのだろうか)。
そのときには、
黒霧島に人気があるというのは、ほんとなんだ、
とおもったくらいで、さほどうれしくかんじなかった。
どちらの店員さんも、接客マニュアルにそって
お客にはなしかけたのではなく、ごく自然な声かけだったけど、
わたしのこころにひびいたのは、女性からのはなしかけだった。
こんなにもわたしがよろこんでしまうのだから、
スーパーはマニュアルにとりいれたらよさそうだけど、
自然に「これおいしいですね」とはなかなかいえない。
ひとがらがおもわずでてくる場面で、
もしかしたらカリスマ店員さんだったのだろうか。
せっかくワインについてはなしをふられたのだから、
「ほかにおすすめのワインがありますか?」と
はなしをふくらませたらよかった。
つぎにまたはなしかけられることはまずないだろうし、
かといって、わたしからおすすめのワインをきりだすのもへんだ。
ちょっとはなしかけられたぐらいで、
こんなに気もちがまいあがってしまうのだから、
笑顔とおしゃべりの効果はかなりたかい。
いっぺんでこのお店がすきになった。
お客とお店とのバリアーをあまりかんじない、
ちいさなお店ならではの、ささやかでしあわせな体験だった。