「旅の歌」を特集していた。
1位は「いい日旅立ち」(山口百恵)で、
2位に「なごり雪」(かぐや姫)がえらばれている。
記事では、「なごり雪」について、読者の体験を紹介している。
東京を去る恋人を駅のホームで見送る歌詞に自身の体験を重ねた読者が少なくない。(中略)島根の女性(60)も別れた恋人が県外に就職することになり、JR松江駅で見送ったことは「青春の苦い思い出」と振り返った。
松江にすみ、年齢も60にちかいわたしは、
この記事に注目しないわけにいかない。
「別れた恋人が県外に就職することになり」とあるから、
みおくった時点では、すでにわかれており、
島根出身の「元カレ」が県外にでていく、という状況だ。
なぜわかれた恋人のみおくりにいったのかはわからない。
もういちどよりをもどしたい気もちがあったのか、
それとも完全なわかれとしてケジメをつけたかったのか。
「青春の苦い思い出」とあるのは、
みおくりに いかなければよかった、という後悔か、
恋愛自体が「苦い思い出」だったのか。
この歌は、東京でのみおくり、という設定で、
でもあまりおおきな駅ではしんみりしたわかれになじまない。
東京駅にむかう、ちいさな駅でのできごととしたほうがしっくりくる。
その点、松江駅はぴったりだ。
県庁所在地の駅でありながら、それほどおおきくはなく、
かといって、島根によくある無人駅でもない。
わたしとほぼおなじ年齢の女性が、
あの松江駅でおもいでをきざんだといわれると
なんだかひとごとにおもえない。
たいていのできごとは、時間がたってしまえば
いいおもいでになりそうだけど、
そうではないわかれもある。
「なごり雪」の歌詞から状況をえがいてみると、
「苦い思い出」としかいえない体験におもえる。
ただかなしい、さみしいとうたうのではなく、
「青春の苦い思い出」をかんじさせるから、
「なごり雪」はいつまでも せつないのではないか。