『老いる意味』
(森村誠一・中公新書ラクレ)
老いるとはどういうことなのだろう。
断片的には情報がはいってくるものの、
老いを体験しつつあるひとりの老人として、
森村さんが自分の状況をかたってくれるのはありがたい。
わたしはもうすぐ60歳となり、
年をとったと自虐的にいうものの、さほど実感がともなわない。
わすれものはおおくなったし、
およぐタイムはだんだんとおそくなっているけど、
それでもまだ決定的に老いをダメおしされた気はしない。
年をとるとは、どういうことなのだろう。
これからのわたしに、なにがやってくるのだろう。
なにか参考になればと本書をひらいた。
森村さんは、老人性うつ病に3年間くるしんでいる。
食欲がなくなり、まわりの景色が色をうしない、
作家なのによごれきったことばしかかけなくなる。
認知症の症状もでて、腰痛にもなやまされ、
それでもいつかはたちなおれることをしんじて
いちにち いちにちを生きていく。
こういう情報が、わたしはしりたかった。
いつかわたしがどんよりとした朝をむかえたとき、
これが老人性うつというやつか、と
自分で診断がつけば、うろたえずにすむだろう。
いちど最低なときを経験した森村さんは、
仕事への意欲はもちつづけたものの、
あまりおおくをのぞまず、
ほどほどのところで生きていければいいと
達観したようにみえる。
病気にかかっても、病気といっしょに生きていけばいい。
第4章からは、老いをむかえるにあたり、
具体的なアドバイスがかかれている。
・「昼寝」の効用は大きい
・誰でも「一日三食」がいいとは限らない
・「量より質」で、おいしいものを求め続ける
めあたらしい項目はとくになく、
あたりまえのことがかかれているのすぎない。
老いとは、特別なことではなく、
だれにでもくるあたりまえの変化なのがわかる。
わたしが「老い」にイメージしているのは、
からだがおもうようにうごかなくなり、
社会とのかかわりがうすれる 孤独な老人だ。
わたしがそんな老いをむかえても、ひととのかかわりを、
あまりのぞまずに生きてきたツケだから、
いまさらどうしようもない。
こわいのは、病気やケガだだけど、
これもまた心配してもしょうがない。
老いをむかえる準備として、
なにかこころがまえができるかとおもったけど、
じっさいに自分が老いてみないと 切実な問題としてよめない。
けっきょく、これまで生きてきたようにしか
老いをむかえられないのだろう。