2021年09月01日

「ぬか」のひとたちが大切にする「そのうち精神」

せんじつの記事にかいた介護事業所の「ぬか」では、
「なんでそんなんプロジェクト」のほかにも
たのしそうなとりくみをされている。
そのひとつが「そのうち精神」で、
一般的には あまりいい意味にとらえられていない「そのうち」だけど、
ほんとうは、とてもすぐれたことばだと 代表の中野さんはいわれる。

ふつう「そのうち」ということばは、
わかれるときにつかう なにげないあいさつにすぎない。
たとえば「そのうちごはんでも」とうのは、
ほとんど実行されることのない 害のないセリフだ。
いわれたほうが、その気になってまっていても、
おそらくずっとおさそいはかからない。
「そのうち」は、いいっぱなしですむ約束であり、
実行の義務がともなわない、便利なことばだ。

「ぬか」のひとたちは、そんな「そのうち」に
肯定的な意味をみいだしている。
いますぐにではなくても「そのうち」ほんとうにやろう、と
あまり信用されていない「そのうち」に、まえむきな意味をもたせた。
すぐにではなくても、「そのうち」やればいい。
わるいのは「そのうち」ということばではなく、
いいっぱなしにしてしまう、つかう側の人間だ。
気ながにかまえていれば、「そのうち」いい風がふいてくれるから、
それまで頭のすみにおいといて、あせらずにまつ。

せんじつよんだ小川さやかさんの『「その日暮らし」の人類学』にも、
状況がととのうまで わすれたかのように気ながにかまえる
タンザニアの露天商たちがでてくる。
商売をはじめるからとお金をせびので、いくらかわたしたけど、
いつまでたってもうごきだすようすがない。
けっきょく くちさきだけだったのか、と
小川さんが残念におもっていたら、
わすれたころに、あたらしくお店をはじめた。
小川さんの友人であるタンザニア人の露天商には、
お金をだましとるつもりはなかった。
ただ、ときがじゅくすのをまつ感覚が 日本人とちがうので、
日本人からすると、お金をせびるだけで、
けっきょくはたらかない、というみかたになってしまいがちだ。

口さきだけで「そのうち」というのではなく、
案としてずっとあたためておけば、
「そのうち」実行にうつすときがくる。
たいせつなのは、わすれないで、「そのうち」をまつことで、
まちさえすれば、「そのうち」いい風がふきはじめる。

posted by カルピス at 22:00 | Comment(0) | 介護 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする