(「ボジョレー」のほうが
一般的なよび名かもしれないが、
ここでは本書の「ボージョレ」に統一する)
フランスのワイン文化全体についての考察となっている。
書名の「BEAUJOLAIS VENDANGES AMERES」は
「にがい収穫」であり、
本書では、ボージョレの、
そしてフランスワインの危機的な状況が
くりかえしうったえられる。
日本ではフランスワインというと
確固たる地位をきずいているようにおもうが、
実情はぜんぜんそうではないらしい。
世界各地で(チリ・オーストラリア・ニュージーランドなど)
ワインがつくられるようになったため、
全体的には生産過剰となり、
相対的なフランスワインの地位は低下しつつある。
フランスにおいても消費されるワインの量は
1960年から2004年のあいだに
135ℓから69ℓにへり、
栽培されるブドウの面積も
生産調整のためへらされている。
生産者の組合はうまく機能せず、
畑の土や水といった環境も汚染され、
ぶどうの木はふるい。
かなり悲観的にフランスワインの現状をとらえている。
つくればうれた時代には、
景気にうかれるばかりで
品質をたかめる努力をしなかった。
ボージョレではヌーヴォー(新酒)ばかりにたより、
熟成タイプのワインつくりをおこたった。
そのつけがまわってきたのだ。
ウィキペディアをみると、
各年度の評価には以下のようなものがある。
95年「ここ数年で一番出来が良い」
96年「10年に1度の逸品」
97年「1976年以来の品質」
98年「10年に1度の当たり年」
99年「品質は昨年より良い」
00年「出来は上々で申し分の無い仕上がり」
01年「ここ10年で最高」
02年「過去10年で最高と言われた01年を上回る出来栄え」「1995年以来の出来」
03年「100年に1度の出来」「近年にない良い出来」
04年「香りが強く中々の出来栄え」
05年「ここ数年で最高」
06年「昨年同様良い出来栄え」
07年「柔らかく果実味が豊かで上質な味わい」
08年「豊かな果実味と程よい酸味が調和した味」
09年「50年に1度の出来」
という評価が紹介されている。
「良い出来」の年ばかりで相対的な評価ではない。
こんなことをやってるから、
品質について信用されなくなるのだろうか。
グローバリゼーションのこの時代、
フランスワインが、そしてボージョレヌーヴォーが
復活をはたすのはそう簡単ではないだろう。
ある状況に適応しきった勢力は、
変化するちからをうしなって、
やがて辺境からの逆襲にのみこまれる、
というのが世のつれだ。
せっかくこういう本をよんだのだから、
「ボージョレ」といえば「ヌーヴォー」とばかりきめつけないで、
ほかのボージョレもためしてみたい。
フランスワインの復活に、
すこしは協力したことになるだろうか。
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