SFかとおもってよんでいると、
なんだかふつうの寄宿舎生活のはなしみたいだ。
とても丁寧な描写で、おそらく訳もいいのだろう、
よんでいて気もちがいい。
安心してよみすすめるうちに、
作者のリズムにだんだんとはまりこんでいく。
いい読書となりそうな予感が
よみはじめたときからあった。
ものがたりはしずかにすすみ、
すこしずつ「介護人」とか「提供」とか、
意味はわかるけど、
どうもそれだけではなさそうな、
キーとなることばがでてくる。
「ポシブル」や「猶予」などの単語にだんだん読者をなじませていき、
いつのまにか小説の世界に
どっぷりはまっていることに気づかされるのだ。
さいごのほうになって、寄宿舎のヘールシャムの存在理由や、
まったく予想してなかったこの世界のなりたちがあかされる。
どこへもいき場のない閉塞感がただよう
不思議な、そしてとてもかなしいはなしだった。
スポンサードリンク