新訳版が新潮文庫から発売された。
こんどの訳は高見浩。
菊池光による旧訳の日本語がきらいなわたしにとって
うれしいニュースだ。
トマス=ハリスのレクター博士ものは全部よんでいる。
どれもおもしろいけれど、
『羊たちの沈黙』だけは訳になじめずイライラした。
菊池光は、ミステリー本でよくみかける翻訳家だ。
手もとにないので具体的にはかけないが、
会話がすごくかたい口調で訳されていて違和感があったし、
すでに出版されている本で読者は「クリフォード」になれているのに
わざわざクローフォドとやったり、
日本語になっていることばを
へんなアクセントにかえたり。
菊池光の訳の不自然さに気づいたのは、
ディック=フランシスの競馬シリーズからだ。
はじめはふつうによんでいたのが、
女性のしゃべりかたが鼻についてたまらなくなった。
せっかくの『羊たちの沈黙』も
心配していたとおり訳にじゃまされて
(訳がないとよめないわけだけど)
素直にたのしむことができなかった。
新訳本の下巻に、訳を担当した高見浩が解説をかいている。
どういういきさつで新訳がでるようになったかしりたかったけど、
そういうことにはふれず、
ただ『羊たちの沈黙』が
いかにすばらしい本であるかの紹介にとどめられている。
ということは、ふれにくいなんらかの事情があったのだと
確信をふかめてしまった。
わたしがすきな『愛しい女』(ピート=ハミル・河出文庫)を訳したのも高見浩で、
この本は、出版された当初、
原作よりも翻訳本のほうがよくかけている、という
へんなほめられかたがされていた。
そこまでいわれると、翻訳家冥利につきるだろう。
高見浩訳の『羊たちの沈黙』で、
まえの訳への溜飲をさげたい。
スポンサードリンク