「おすすめ文庫王国2012」のベスト1作品だ。
どうせろくに活字をよまないわかものむけの
携帯小説みたいなもんだろう、と
あまり期待しないでよみはじめると・・・
おもしろかった。
4つのはなしからなる連作短編集で、
それぞれが微妙につながっている。
ケガで入院中の古本屋の店主(美人)は、
本についての豊富な知識とふかい愛情をもつ。
彼女は現場をみなくても、
本にまつわるわずかな情報から
それぞれの出来事について、
うらにかくされた状況までを推察してしまう。
本の表紙はこの女店長・栞子(しおりこ)さんで、
こんなひとが店番をやっていたら、
なんとかおしゃべりをかわしたいと
わたしも常連客となっていただろう。
古本屋は、わかいころ、わたしがつきたかった仕事だ。
店のおくにすわってすきな本をよんでいたらいいなんて、
なんてすばらしい職業か、とおもっていた。
じっさいは、本についての幅ひろい知識が必要であり、
のんびり本をながめていて、つとまるはずはない。
それでも、いまもまだ、頭のすみで
「本にかこまれてイスにすわっているだけで仕事となるもの」
をもとめている。
古本屋よりも、本がおいてあるサロンみたいなかんじだ。
栞子さんをはじめ、登場人物のだれもが
じっさいにまわりにいそうなひとたちだ。
三上延の本をよむのははじめてで、
ていねいで、神経のいきとどいた作風に好感をもった。
この作品はすでに続編が出版されている。
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