土曜日が参観日だったため、きょうが振替休日なのだ。
たいして期待せずさそったのに、
意外にもむすこは「いいよ」とこたえた。
一般的にいって、むすこができたときに男親は、
いっしょになにをしたいとおもうものだろう。
わたしにとって父親になるということは、
むすこといっしょにキャッチボールをすることだった。
むすこが5歳くらいになり、
じっさいにキャッチボールをする機会をもてたときは
わたしがイメージしていた父親に
なんとかほんとうになれたことがうれしかったものだ。
トレーニングについては、
とくにイメージやねがいがあったわけではない。
とはいえ、15歳のむすこといっしょにからだをうごかせたのは、
わたしにとって、得がたいできごととだったとおもう。
わたしの頭をかすめたのは
「スペンサー」シリーズの『初秋』
(ロバート=B=パーカー・ハヤカワ文庫)だ。
なにかの事情でスペンサーが15歳の少年をあづかることになり
ログハウスをつくったり、料理をすることを体験させる。
そのなかで、バーベルをつかったトレーニングもおこなわれたのだ。
はじめはかるいバーベルでもあげられなかった少年が、
しばらくするとあつかうウェートがふえ、からだつきもかわってくる。
むすこはベンチプレスがはじめてだったようで、
30キロをあつかうのがやっとだった。
まさしく『初秋』にでてくる少年のレベルだ。
ベンチにねころがった姿勢で
バーをもちあげるこの種目は、
なれないとちからのだし方がわからずやりづらい。
はじめてのときは、わたしもこんなものだったかもしれない。
ベンチプレスにかぎらずウェートトレーニングはフォームが大切で、
それにもちろんつづけなくては効果がでない。
きょうは、こういうトレーニングがあることを
むすこに紹介できたことでよしとしよう。
それに、このさき彼がトレーニングをつづけるときは、
親ではなく、だれか他人とのかかわりのなかで
(スペンサーとまではいわないが)
体験するべきことだろう。
ひととおりウェートトレーニングをしてから、
トレッドミルにのって10キロはしる。
これもなれないとはしりにくいので、
おわったらモスバーガーへいこうとニンジンをちらつかせる。
これはわたしにもいい目標となり、
ヘロヘロになってなんとかはしりおえる。
家にかえってモスチーズバーガーをたべ、ひといきつく。
モスの店でたべなかったのは
すぐにからだをやすめたかったからだ。
つかれをかんじながら昼寝をたのしみにコーヒーをのんでいると、
むすこはすぐにあそびにでかけていってしまった。
すぐにうごけるわかさに感心し、ぐったりしながらわたしはみおくる。
もうひとつ頭にうかんだのは、少年カフカ君だ。
『海辺のカフカ』のなかで、
家をでた15歳のカフカ少年は
四国の高松でトレーニングジムにかよいながらしばらくすごす。
カフカ少年は、むすこよりずっと成熟してるけど、
あいつはあいつなりにいろんな問題をかかえているのだろう。
むすこがこれからどんな人間にそだっていくのか、
わたしはそれをどこまでみとどけられるのか。
15歳のむすこといっしょにトレーニングをする父親の頭のなかは、
雑念でいっぱいだ。
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