いい旅をしたひとのはなしをきくと(よむと)
うらやましくなり、自分でもそんな旅がしたくなってくる。
わたしにとっての「いい旅」とはなにか。
自分の能力を最大限につかって
旅さきの土地にどっぷりつかることだ。
著者は55歳で退職し、翌年の2007年に、
1ヶ月をカンボジア、そのあとさらに1ヶ月をタイとラオスを自転車でまわっている。
それまでそうした旅行をしたことがなかったひとが、
56歳という年齢で、なんでこんなにいい旅行ができたのだろう。
わたしがきょねんアンコール遺跡をたずねたときは、
トゥクトゥクやバイクタクシーによる移動がほとんどで、
自転車はレンタサイクルを半日利用しただけだ。
このひろい国を自転車でまわろうなんて、かんんがえもしなかった。
平戸さんはしかし、カンボジアはちいさな国と紹介し、
バイクタクシーもいかないような奥地への移動もためらいがない。
車のとおりがすくなく、たいらな土地がおおいカンボジアは、
自転車旅行にむいた場所かもしれない。
でも、人がすくないということは
それはそれでこわいこともあるはずだけど。
平戸さんのすごさを紹介すると、
カンボジアでの1ヶ月のあいだにはしった距離は2000キロ。
いちにち平均85キロから90キロで、
最長の走行距離は150キロとなっている。
わたしの不名誉な数字をひきあいにだすと、
33歳のときに自転車旅行をしたマレーシアで、
いちにちに157キロはしってヘロヘロになった。
たいらな行程だったにもかかわらず、
そのあとの5日間はつかいものにならず、
ほとんどゲストハウスでねてすごしたことをおぼえている。
56歳ではじめて自転車旅行をされたということなのに、
体力も判断力も、ベテランの旅行者のようだ。
文章もこなれている。
19世紀のイギリス人がかく旅行記のように、
旅行先でのできごとがものすごくこまかくかいてある。
ルポルタージュのように、大切なところだけに焦点をあて、
あとはかるくながされると、よんでいるほうは欲求不満になる。
旅行ずきな自転車のりとしては、
どうでもいいようなこまかいところもしりたいのだ
(ものの値段とか、町のようすとか)。
はじめてとはおもえないかきなれたふではこびだし、
旅行のすすめ方から平戸さんの誠実さがつたわってくる。
すぐ音をあげるのがわかっていながら、
わたしもまたこんな旅行をしてみたくなった。
平戸さんのつぎの著作がたのしみだ。
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