2012年05月22日

『チャイルド44』もし1933年のロシアの寒村でチャコがみつけられたら

「このミステリーがすごい!」2009年版海外編の1位となった
『チャイルド44』(トム=ロブ=スミス・新潮文庫)は、
1933年の冬、ロシアの寒村を舞台に絶望的な描写からはじまっている。
この年、村は極限状態におちいっていた。
ひとびとは徹底的に腹をへらし、
村のすべての動物はくいつくされている。
家畜やペットはおろか、
野ねずみさえみんなたべられてひさしい。

「もう革のブーツも細長く切って、
イラクサとビートの種と一緒に煮てしまっていた。
ミミズも掘り尽くしていた。
樹液も吸い尽くしていた。
今朝は熱にうかされ、歯茎にとげが刺さるまで、
台所の椅子の脚を噛りつづけた」

そんななか、10歳の少年が
森ににげこむ1匹のネコを目にとめる。

「たいていの者がもはや食べものを探すことさえあきらめていた。
そのような状況下で猫を見かけるというのは、
奇跡としかほかに言いようがなかった。(中略)
バーヴェルは眼を閉じ、最後に肉を食べたのがいつだったか
思い出そうとした。
眼を開けると、唾が口の中に溜まっていた。
それは涎となって顎を伝った」

少年はいそいで母親にネコのことを報告する。
母親は、こおった池の底にかくしておいたネズミの骨とりだして、
それをエサにネコをつかまえてくるよう少年をおくりだす。

ながながと引用したのは、
もし1933年当時のこの村で、
わたしの家のチャコ(8歳のオスネコ)が発見されたら
人々はどのように反応するだろうと、
彼のおなかをなでるたびにおもうからだ。
以前からふとっていたチャコは、
この半年でさらに脂肪をたくわえ、
いまや7.5キロの体重となった。
これがどれくらいのおもさかというと、
ひとことでいえば野生のタヌキとおなじ体重であり、
ふとったネコとよぶ域をはるかにこえている。
おでかけからかえってきたとき、
外の塀からジャンプして着地すると
ネコとはとてもおもえないおおきな音がする。
足の骨がおれてしまわないかと心配だし、
そもそも極度の肥満がからだにいいわけがない。
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お腹だけでなく、いまや背中にもあつく肉がつき、
あの寒村でなくても「食用なのでは」という気がしてくる。
わたしはチャコの脂肪をまさぐりながらはなしかける。
このかたまりはなんとかしたほうがいいんじゃない?
ここがあの、1933年のロシアの村でなくて
あんたほんとによかったね。

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posted by カルピス at 21:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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