2012年08月06日

山・川におけるシーナ・マコトの誕生『ハーケンと夏みかん』

『ハーケンと夏みかん』(椎名誠・集英社文庫)

web「椎名誠 旅する文学館」でとりあげられていたので
ひさしぶりによみかえす。
「山と渓谷」に連載されていたもので、
そのせいかBE−PAL路線よりも山や川あそびについて
本質的なよろこびについてふれてある。
連載とはいえ内容に一貫性はなく、
仲間たちと雪山にでかけながら、
酒をのみすぎて次の朝おきれない「雪山ドタバタ天幕団」や、
焚火についてのおもいでをまとめた「極私的焚火論」など、
椎名誠の出発点をしることができるたのしい本だ。

「旅する文学館」のなかで目黒考二がはなしているように、
三島悟の解説がすばらしい。
当時「山と渓谷社」にいた三島悟がいろいろな企画をもちかけて、
山に弱点のあった椎名誠を(結果的に)そだてたことがわかる。
三島悟の解説を引用すると、
元祖あやしい探検隊は、漫然と焚き火を囲み、ただひたすら飲みまくるという、評価基準の 定まらぬ旅に終始していたが、このとき初めて遊びにカヌーという道具を持ち込んだのである。猿が道具を使うことで人類の初期発展段階を遂げたように、あやしい探検隊がこの旅において自己止揚をかちとり、第二次あやしい探検隊=いやはや隊へと変貌するのである。

と、この連載をつうじて椎名誠のうごきがどうかわったかを
正確におさえている。

わたしがすきなのは、椎名誠の暴力的な迫力で、
こんなに男くさいひとはそういないし、
椎名誠の人気もここらへんに関係しているとおもう。

これについても解説で紹介してあり、
たまたま同行した釣り師で調理師の林サンが、当たり屋に車をぶつけられてインネンを吹っかけられた(中略)。
先行していた椎名・沢野隊が戻ってきて「ドーシタ、ドーシタ」と車から下りてきた。不穏な空気を察知した当たり屋はあわてて逃亡。「かくかくしかじか」と事情を説明したところMr.シーナは表情にわかにかき曇り
「ザケンナッ、これからすぐに追いかけて袋だたきにしようぜい」と

この「ドーシタ、ドーシタ」がいかにもシーナ・マコトだ。
あぶないおっさん的な暴力性が
「まじめにあそぶ」東ケト会の、そして
「あやしい探検隊」「いやはや隊」へとつづく男くさい団結をささえている。
椎名誠がいちばんシーナ・マコトだった頃の魅力がこの本の背景にあり、
いろんなはなしがごちゃまぜになっていながらおもしろくよめる。

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posted by カルピス at 23:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 椎名誠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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