2012年08月19日

『風の帰る場所ーナウシカから千尋までの軌跡ー』(宮崎駿・rockin'on)

別の本にのっていた宮崎さんへのインタビューをよんでいたら
質問者がただあいづちをうっているだけの
あまりにもつまらない内容だったので
よみつづける気をなくしてしまった。
あたりまえながら、インタビューが生きるか死ぬかは、
インタビューをするひとにかかっている。
口なおしに歯ごたえのあるものがよみたくなり、
『風の帰る場所』をひっぱりだした。

『風の帰る場所』はrockin'on社がだしている雑誌の
『Cut』と『SIGHT』にのったもので、
インタビューは渋谷陽一さんがおこなっている。
渋谷さんは、宮崎さんのはなしを
ありがたくきくだけのつもりはなく、
インタビューというより対談にちかい内容となっている。

はなしがいのある相手にたいして
宮崎さんはとてもよくしゃべる。
はなすことを文字におこせば、
そのまましっかりとした文章になってしまうほど
はじめからととのった内容が、
宮崎さん一流の、自分のことばでかたられる。
この本は、『魔女の宅急便』から
『千と千尋の神隠し』まで、
12年間にわたっておこなわれた
5回のインタビューが1冊にまとめられている。

宮崎さんは、インタビューのなかで、
大人むけの作品はつくらない、とか、
東京での生活を応援するような映画はつくれっこない、
とはなしていながら、
のちに『紅の豚』や『耳をすませば』という作品がうまれている。
渋谷さんは、そこらへんの事情をひきだすのがとてもうまく、
なぜつくる気になったのかということ、
また、作品の構造とか図式について、
宮崎さんがなかなかこたえてくれないようなことについて、
おおくのはなしをひきだすことに成功している。
『ラピュタ』をエロチックな作品と指摘したりして、
渋谷さんならではの意外なきりくちがおもしろい。

宮崎さんについては、あまりにも有名な表現者となってしまい、
ヒューマニストとか、自然にやさしいジブリなど、
現実とはちがうことが観念的にひとりあるきしている面がある。
渋谷さんは、宮崎さんの資質にある
ヒューマニストでない部分をはやくからよみとり、
作品がちがう場所におしこまれることを懸念していた。
実は宮崎作品の持つテーマは暗く重い。子供向けの作品にもかかわらず、いや子供向けの作品であるからこそ、宮崎駿は自分の思想のすべてを懸けて作っている。(「はじめに」より)

宮崎駿とその作品について、
本人からおおくの分析をひきだしているめずらしい本だ。

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posted by カルピス at 22:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 宮ア駿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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