宮田さんの脱力系エッセイ
『なみのひとなみのいとなみ』(宮田珠己・幻冬舎文庫)をよむ。
宮田さんの本には、旅行やあそびについてのはなしがおおく、
それはそれでおもしろいけれど、
この本はとくに
「なぜわたしははたらくのがきらいか」についてほりさげてある。
「仕事をがんばらないひとの人生論」みたいなかんじで、
おなじ方向をめざすわたしにとって興味ぶかかった。
朝起きてみると、どうもおかしい。仕事する気がしないのだ。って毎度のことじゃないか。いや、そうじゃない。普段が十やる気がないとすると、この日のやる気のなさは三十七度数ぐらいあった。
はるか昔、銀河の彼方で、まだ私がサラリーマンだった頃、営業の外回りで街を歩いていると、突然、働きたくない、という天啓に打たれた。圧倒的な”働きたくない”の光が、天の啓示として、どういうわけか、営業中の私に降り注いだのである。おお、神よ、私は、働きたくない。
というから宮田さんの「はたらきたくない」は腰がすわっている。
けっきょく宮田さんは、9年3ヶ月でつとめていた会社をやめる。
冒頭にかいたように、旅行がすきでたまらず、
旅行しまくりたかったからだ。
きっとこの先、四十歳になっても、旅行したい旅行したいといい続けるだろう。そのときになって、さっさとやっときゃよかったと後悔するぐらいなら、今すぐやって後悔すべし。
とリスクをせおってユーラシア大陸横断旅行にでかけている。
わたしのすきなはなしは、
二十歳のときはじめての海外旅行に中国へでかけたときのもので、
宮田さんは、道をたずねるためにふたりづれの少女に声をかける。
彼女らは首をかしげながら、こう答えた。『シェマ(何)?』その瞬間、私の中を、かつてなく爽やかな風が吹き抜けたのだった。ああ、言葉も通じない見知らぬ場所で私は今ポツンとひとり立ち尽くしている。なんという自由!なんという開放感!こんなふうにして一生見知らぬ土地を旅して暮らしていけたら、どんなに素晴らしいことだろう。
というから、筋金いりの自由人であり、旅行者だ。
はたらきたくない、というのを会社にいてつらぬくよりも、
さきのことはわからないけど、すきなことをやるほうが
本人もまわりも、ぜったいしあわせだろう。
この本のなかで、旅行とはぜんぜん関係ないところで
「お前は島根県と鳥取県の位置もわからんのか」
という記述がでてきた。
島根県の知名度のひくさは、そんなに有名なことなのか。
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