あつさへの懸念がはやくから指摘されていた。
ザッケローニに監督も、試合まえの記者会見で、
「暑さが唯一の心配」とかたっている。
じっさい、試合時間のピッチは午後3時半とはいえ35℃の気温で、
日本の選手はコンディションをととのえることがむつかしかったはずだ。
「あつさ」について、どんな対応をとることができるだろう。
よくいわれるのは「試合中にこまめに水分補給をすること」だけど
そんなことはだれにでもおもいつくことで
わざわざ代表監督が指示するまでもないだろう。
試合数日まえに現地にはいってからだをならすのも
有効かもしれないけど、
ヨーロッパ組が合流できる日程をかんがえると
実行はむつかしい。
この試合でザッケローニ監督がだした指示は、
オマーンにたいしてというよりも、
あつさにどう対応するか、というものだった。
あつさのなかでどうやって体力を温存できるかを、
ポジションチェンジによって実現させている。
最初の交代は、後半15分にフォワードの前田にかえて
サイドバックの酒井高徳をいれる。
その意図することは、
ボールをキープでき、シュートもうてる
本田の負担をかるくすることだった。
本田をフォワードにあげるために、
本田のいたポジションに清武をいれ、
そこには岡崎がながれと、
ひとりの交代で球つきのように
5つのポジションが連動してうごいている。
その結果、チーム全体の運動量をおとさずに、
あつみのある攻撃をつづけることができた。
もうひとつの交代として、後半39分に清武にかえ細貝をいれている。
細貝をボランチにいれて守備をおさえ、
遠藤をまえにあげて攻撃にからめるようにする。
結果的にはこの采配があたり、
日本はかちこしとなる2点目を終了間際にあげることができた。
あつさ対策というと、2006年ドイツW杯での
対オーストラリア戦がおもいだされる。
このときもピッチ上は30℃をこえるあつさがあり、
そのための対応がもとめられる試合だった。
当時のジーコ監督は、後半34分に柳沢にかえて小野をいれている。
この交代は、ピッチ上の選手たちに明確な指示としてつたわらず、
ある選手はもっとせめようとし、
ある選手は中盤でボールをキープ、とうけとめたという。
その後オーストラリアにたてつづけに3点をいれられて
なんともあとあじのわるいまけ方をした。
選手交代は、ただ単にフレッシュな選手をいれればいいというものではなく、
その交代がどういう意図をもつかを
選手全員が意思統一でききなければ有効な指示とはならない。
いまの日本代表は監督の意図をうけとめ、
試合に反映させるだけの実力をつけていた。
ここまでにいたるには、20年をかけてさまざまな経験を
日本サッカー界全体でつみかさねることが必要だったのだろう。
はじめて中東でのアウェイの試合にいどんだというザッケローニ監督が、
こうして適切な対応をとり、
選手たちもそれにこたえる成熟さをみせてくれた。
わたし自身についていうと、いろいろな解説をよまなければ、
今回のザッケローニ監督のとった選手交代の意図を
わたしは理解することができなかった。
そんなこともわからない自分の未熟さをはじながら、
目のこえたファン・サッカー関係者が着実にそだっている
日本サッカーの状況をありがたくおもう。
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