2013年01月16日

『生きていてもいいかしら日記』芸の域にたっした赤裸々報告

『生きていてもいいかしら日記』(北大路公子・PHP文芸文庫)

『おすすめ文庫王国』の第9位。
40代・独身・女性のトホホな生活が、
これってあんがいありかも、と
すこしは肯定的にながめられるようになる。

女性の日常生活を、
ふつうここまで赤裸々にあかさないだろう、
ということまでなんでもかく。
お腹をきる手術をしたら
パンツをさげて傷口を男性の友だちにみせてしまうし、
よっぱらったときにかきかけたメールに
「あまのにゅう」とあり、
記憶をこまかくたどるとそれが
「安馬(現日馬富士)」の乳輪についての
ちいさな発見であったりとか、
脱力系のどうでもいいはなしが延々とつづられている。

「そうよ私は四割減」では体脂肪率が40%をこえた報告をする。

「しかし、四割が脂って。
どうしてこんなことになったのか。
私だって悪い人間じゃないんですよ。
挨拶はするし、ゴミも分別するし、税金もおさめてる」

これが北大路公子を象徴するノリだ。
公子さんはかんじたことをそのまま正直にかいている。
おおげさに表現したりすると、この手の話題は
いっきょにしらけてしまうけど、
あるがままをなんの加工もせずに
そのまま読者のまえになげだしてくるから、
よむほうはあまりの無防備さにおどろき感心するしかない。
なんという正直な女性だろう。
ここまでくればたしかに芸といってよい。
やせたいとか、親といっしょにくらしていてたのしくない、とか
もっとまえむきに生きようだとかの
白々しいウソはどこにもかいてない。

公子さんは着実にふとりつつあり、
ひるからの酒がすきで
運動なんてぜんぜんしない。
公子さんのいまにはあんまり関心をもたないが、
10年、20年さきにどういうひとになっているかはしりたいとおもう。
やってることはメチャクチャながら、
いかにもストレスのなさそうな生活なので、
あんがいいいかんじで年をとってるかもしれない。

でも、これが「おすすめ文庫本」の全体の9位というのは
あまり収穫のない年だったということか、
なんてこまかいことをいわずに、
酒をのんでよっぱらってねてしまおう、というのが
この本をよんだあとのただしい反応だ。

きょうは、ブログ更新が500回という
わりと記念すべき日だったのに、
こんなトホホ本を紹介することになるとは、
皮肉でいじわるな運命にすこしがっくりきた。

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posted by カルピス at 22:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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