(遠藤保仁✕西部謙司・株式会社カンゼン)
西部さんは、遠藤選手の特殊な「眼」に目をつけた。
遠藤選手は、ピッチにたちながら、
まるで記者席から俯瞰しているように
ゲーム全体をみわたしている。
もちろんどの選手も目にするものから
情報をあつめているわけだけど、
遠藤選手の場合はその量と質が
ほかの選手と比較にならないほどぬきんでている。
中学生のころからそうやって眼をつかってきたので、
いつのまにか意識しないでもいろんなものをみて
情報をあつめるようになっていたのだそうだ。
なんとなくみえている、というのではなく
「より、明確に、その意味がわかるように見る。
見えた風景を切り取るように、
写真に撮るように、
見るというより、見抜く」
というレベルで、なんだか修行により特殊な能力を身につけた
忍者のはなしをきいているみたいだ。
「特殊な眼を持っている遠藤保仁にとって、
サッカーはどういうふうに見えているのだろう」
という視点から、本書はヤット流のサッカーを分析し、
なぜ遠藤選手のプレーはほかの選手とちがうのかをあきらかにした。
理づめの部分もあるが、感性の領域のはなしもおおく、
いっけんとらえどころがない遠藤選手のはなしを
わかりやすい形で読者に提供している。
遠藤選手のサッカー観がどうやしなわれたか、
W杯南アフリカ大会の直前に守備的なスタイルにきりかえたことを
どうとらえているか、
遠藤選手が監督をしたら、どんなサッカーをめざすのか、など
遠藤選手の魅力を西部さんがじょうずにひきだした本となっている。
西部さんは、遠藤選手の発想を
「ちょっと手がつけられない感じがするぐらい強気」
と表現している。
たとえば、遠藤選手はボールをとられるとおもってプレーしていない。
一方は「とられたらあぶない」といい、
遠藤選手は「とられないでしょ」なのだから、議論がかみあうわけがない。
「意図はわかった。アイデアは素晴らしい。
だが、多くの監督はこれを認めないとおもう。
実際、ガンバ大阪では当時の西野朗監督から
注意されていたという。
『注意されましたね。まあ、無視してやってましたけど(笑)』」
数的優位についても遠藤選手は認識がちがう。
「一般的に守備は数的優位が前提で、
逆にいえば攻撃は数的不利な状況からどうやって
チャンスを作るかが課題である。
一方、遠藤が数的優位を力説するのは攻撃面で、
守備は『同数でいい』なのだ。
「その結果、もしフリーでいる相手にパスをつながれても、
『だされたら、相手をほめます』
いかにリスクを冒さないかではなく、
いかにリスクを冒すか。
どうも、そういうことらしい」
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