2013年06月29日

『THE SCRAP』(村上春樹)「『鳥』なんかただの鳥の集会」というとらえ方がおかしい

『THE SCRAP 懐かしの1980年代』(村上春樹・文藝春秋)

スポーツをあつかう雑誌『スポーツ・グラフィック・ナンバー』誌に
1982年から1986年にかけて連載されたエッセイだ。
『ナンバー』誌から村上春樹さんのところに
アメリカの雑誌・新聞がおくられてきて、
その記事のなかから村上春樹さんが
おもしろいとおもったものをスクラップして原稿にまとめる、
というやり方ですすめられている。

おもしろかったのは映画作品『クージョ』について。
『ピープル』誌による批評が、

「この映画に比べれば、『鳥』なんかただの鳥の集会だし、
『ジョーズ』だってはた迷惑な魚の話にすぎない」

というからすごいもちあげかただ。
よんでいてついわらってしまったけど、
「『鳥』なんかただの鳥の集会」、といってしまえば、
たいていのものはありきたりの低俗作品としてカタがつく。
「『ジョーズ』にくらべれば『クージョ』なんて
病気の犬のはなしにすぎない」なんて。

このとらえかたをいかせるのは、
冷静さをとりもどしたいときだろう。
ついのぼせて悪徳商法なんかにひっかかりそうなときは、
深呼吸して「『ジョーズ』なんてはた迷惑な魚の話にすぎない」
ととなえれば、気もちをおちつかせる効果がありそうだ。
反対に、自分のことをこういうふうにポジティブなみかたをするのは、
たとえば仕事にむかうときなどは、絶対にやめたほうがいい。
かんちがいしなければ、やっていけないときがたしかにある。

村上さんは『クージョ』の原作について
「部分的には面白いのだけれど、
いかんせん長すぎて途中でだれてしまうところがあって、
キング・ファンの僕としてもちょっとしんどい」
と紹介している。
わたしにとっての『クージョ』は、
たしかはじめてのスティーブン=キングであり、
どんどんたたみかけてくるリアルな恐怖におどろいたものだ。
とても「病気の犬のはなし」なんていえないこわい世界だった。

『"THE SCRAP"』には「おまけ」として
ロスオリンピック期間中、村上さんがどう東京ですごしたか、
というエッセイと、
東京ディズニーランド見学についてのはなしがついている。
30年もまえの記事なので、村上春樹さんもさすがにわかい。

陸上トラックでゴルフの練習をはじめるおじさんとケンカしたり、
「I ♡原宿」と「好きです、北海道」のどちらが不快か、
とかんがえてみたり。
東京ディズニーランドについては意外にも好意的で、
「だいじょうぶです。面白いから」と紹介している。

「早寝早起きというせいもあって、
夜のデートはあまり好きではない。
九時ごろになるとついうとうとしてしまったりする。
うとうとついでに・・・・なんてことはあまりない」

なんて記述もある。
まだそれほど名前がうれてなくて
(『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』
をかきあげた、というはなしがのっている)、
のんびりと東京でくらしている30代のハルキ青年は
けっこうたのしくやってたみたいだ。

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posted by カルピス at 16:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | 村上春樹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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