2013年07月16日

『必修科目鷹の爪』(内藤理恵子)鷹の爪とはいったいなんなのだ

『必修科目鷹の爪』(内藤理恵子・プレビジョン)

本屋さんの棚をみてまわっていたら
運命的なであいとしてこの本が目にはいった。
目にはいった以上、かわないわけにいかない。
著者の内藤さんは大学で講師をされているようで、
この本は1〜6限までの講義というスタイルをとっている。
かきだしはこうだ。
「必修科目鷹の」』を受講される皆さま、こんにちは。この講義はアニメ『秘密結社 鷹の爪』を通じて、多岐にわたるジャンルを・・・・・いや、ジャンルの垣根を超えて楽しく愉快に学んでいく科目です。

鷹の爪について内藤さんがおもいついたことを
あまり脈絡なくかきつづってあり、
サッと目をとおしただけでは
いったいこの本はなにがいいたいのか、
じつのところよくわからない。
なんとなくかんじるのは、
鷹の爪をサブカルチャーとしてとらえ、
それをどういまの日本社会、
とりわけネットが中心となった社会で評価し、
位置づけていくかについてかかれている、
ということぐらいだ。

「学生に鷹の爪団の『恋するワタシの不思議パワー』の小話をしたところ、
その後、学生から『先生が言いたいことがなんとなくわかった。
恋愛に依存しないでとりあえずレポートがんばる』(中略)
といった前向きなコメントをもらって、
『鷹の爪団に救われた』と思ったのでした」(内藤)

「先生の言いたいことがなんとなくわかった」
というのがポイントであり、
この本の性格をよくあらわしている。
「なんとなく」でしか鷹の爪をとらえることはできない。

めくっているうちに、これはすごい本なのではないか、
という気がしてきた。
鷹の爪の魅力を、ファンだとおもっているひとが
正確に理解しているかというと、それもまたあやしくて、
おおくの子どもむけ番組や商品にあかるい小学生でなければ
鷹の爪の真意をくみとることはむつかしいのかもしれない。
それほど鷹の爪の魅力はつかみどころがなく、
その存在はこれまでのサブカルチャーのなかでも異色をはなつ。
なにが、なぜおもしろいのか、ということについて、
とらえどころがないのだ。
それを講義としてあつかおうとするから
内藤さんのはなしがあっちにいったり、こっちにいったりするのは
しかたのないことなのだろう。

この本の、ひとつの核となっているのは
「鷹の爪はなぜマイナー感を失わずに
メジャーになったか」だ。
へたうまな絵がうまくなってはいけないし、
キャラクターたちがたくみにうごくようになってもよくない。
マイナー感が生命線でもある鷹の爪は、
しかし進化もまたしていかなければあきられてしまう。
鷹の爪は、とりわけその微妙なバランス感覚が要求される作品だ。
デビューすることはできても、それをつづけるのはかんたんではない。
蛙男こと小野亮氏の経歴をあきらかにしながら、
内藤さんは小野氏の戦略について分析する。

本書は、「鷹の爪」とはいったいなんなのだ、
という問題のおおきさに気づいた内藤さんが、
学問の世界からはじめてとりあげた稀有な本といえるだろう。
よくわからないけど、なんとなくたのしいという、
内藤さんの当初の目標がはたされている。
この本をよんだからといって
鷹の爪の魅力は理解できないけれど、
鷹の爪を社会に位置づけるために必要な本だった。
こういう本がようやくあわられたことをうれしくおもう。

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posted by カルピス at 09:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 鷹の爪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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