「あたり猫とスカ猫」というはなしがのっていた。
「こういうことを言うと怒る人がいるかもしれないけど
猫には『あたり』と『スカ』の二種類がある」
と、身もフタもないことがかいてある。
村上さんによると、あたりネコにめぐりあう確率は
「だいたい三・五匹から四匹につき一匹」ということだ。
この本がかかれたときの村上さんはまだ30代で、
内容にそれほど気をつかう必要はなかったのだろう。
もしも、ノーベル文学賞がどうのこうのいわれる
いまの村上さんがこんなことをかいたら、
さすがに問題になりそうだ。
でも、「スカ猫」というのはたしかにいる。
わたしの家のネコがちょうど「あたり猫とスカ猫」なので
とてもよくわかる。
「スカ」のほうのチャコは、いつもあわれげな声をあげて
脈絡なくごはんをねだってくる。
いつも追加するわけにいかないので無視すると、
あてつけでフスマをバリバリいわせて爪をといだりする。
ちょっとすきまがあると外にでないわけにはいかず、
でも外にでるとすぐ家にもどりたくなって
窓のそとからいれてくれとさわぐ。
ひとがうごけば、自分にごはんをくれるのではないかと
すぐにおきあがってうしろをついてあるく。
部屋にはいっても絶対に戸をしめない。
たべてばかりいるので、8キロと、
ネコというよりタヌキの体重になってしまった。
「スカ猫」という分類をしらなかったわたしは
ああ、こいつは頭がわるいんだ、と
ついいじわるな態度でつらくあたってきた。
ネコにいるんだから人間もきっと・・・とはかんがえないほうがいい。
3.5から4人にひとり、つまり、4人のうち3人ちかくはスカということで、
二流人間を自称するわたしは、絶対スカにわけられる側だ。
わたしがネコだったら、さぞかしつらいおもいをしたことだろう。
「いちいち『あたり猫』みたいなまねがやってられるか」、
とやさぐれていたにきまっている。
わたしの数すくない資質として
「ネコとなかよくできる」をかぞえているけど、
スカの側からしたら、ただのいじわるなオヤジにすぎず、
ひとりよがりなレベルでしかないのかもしれない。
資質というのは、なかなか本人にはわかりにくいものだ。
「スカ猫」についてだけでなく、本全体が気楽にかいてありとてもおもしろい。
有名になるまえの朝日堂として、おすすめの一冊だ。
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