2013年10月20日

古本屋さんめぐりのおもいで

『本の雑誌』11月号の特集は、
「帰ってきたぜ、神保町!」だ。
「本の雑誌社」が笹塚から神保町にひっこして1年たち、
あらためての特集になっている。
「二階以上にある古本屋さんを畏れて巡る」や
「私の偏愛古本屋」という記事がいいかんじだ。
以前から「本の雑誌」における古本屋さんの話題はおおい。
何軒もの古本屋さんをめぐるという、
都会ならではのたのしみがうらやましい。

わたしのすむ町で古本屋さんにいくというと、
いまでは市内に3店あるブックオフへ、ということになってしまった。
わたしが学生だったころにはブックオフはなく、
いわゆる古本屋さんが市内に2、3軒あった。
「いわゆる」とか、「2、3軒」というあいまいなかきかたなのは、
やってるかどうかわからないような店や、
ひらいたけどすぐにつぶれてしまった店もあり、
はっきりとかぞえられないからだ。

30代前半とおもわれるわかいひとがはじめた古本屋があった。
あまりよく整理されてなくて、
いかにもおおあわてで本をかきあつめたようなかんじだ。
あまり本ずきでないひとが
ひっこしの荷物としてだしたような本や、
ただふるいだけで賞味期限のすぎているような本がおおかった。
ゆっくりできることと、わかい店主とすこしおしゃべりするのがたのしくて
月に1回くらいのぞいていた。
ひるまえにいくと、オムライスなどの出前の皿がおいてあり、
こうやってずっと本をながめていられる生活もあるのかと
店主の人生にすこしあこがれたりもした。
けっきょくその店は1年くらいでなくなってしまい、
古本屋経営についてはなしをきくまでにはいたらなかった。

もう1軒の店は、郷土資料や初版ものもあつかっている
しっかりした古本屋さんだった。
本が定期的に補充されており、
店をのぞくたびに本棚のようすがすこしずつかわっている。
100円程度の本もあつかっていて、
五木寛之さんの本は、ほとんどこの店でかったようにおぼえている。
ご主人はいかにも古本についての知識がありそうで、
ときおりおとずれる常連客としずかにはなされている。
「開高健(けん)の本ありますか?」とお客がたずねたことがあり、
やんわりと「かいこうたけし」と訂正された。
奥の机に店主がすわり、そのまわりには雑多に本がつみあげられていて、と、
この店のたたずまいがわたしにとっての古本屋さんだ。
あとで大阪や東京の古本屋さんをたずねるようになると、
わりとおおくの店がおなじような雰囲気をもっており、
古本屋のひとつの典型であることをしった。
椎名誠さんの『さらば国分寺書店オババ』にあるように、
ひとむかしまえは、クセのある古本屋さんにきたえられて
いちにんまえの読書人になったのだろう。

大学生のころ、おなじクラブの先輩にたのんで
大阪の古本屋さんめぐりにつれていってもらったことがある。
そのひとも本がすきで、学生なのでお金もなく、
定期的に十数軒の古本屋さんをまわっており、
効率よくめぐるコースができあがっていた。
古本ずきなひとは、みんなおなじようなことをしてるはずだ。

わたしがすきだったのは、高田馬場駅から早稲田大学にむかっての
早稲田どおりにならぶ古本屋さんめぐりだ。
とおりを往復して両側の店をみてまわると、カバンがいっぱいになる。
ある店に、文学全集の『戦争と平和』(トルストイ)が、
1巻と2巻はあるのに3巻目がなく、
ちかくの店をさがしていたらまさにその3巻目がみつかったときは
ものすごくうれしかった。
ぶあついその全集が、1巻たった100円だったのだ。

古本屋さんめぐりはある種の病気みたいなもので、
もうすでにもっている本でも
愛着があるものにたいしてはとおりすぎることができず
ついかってしまうことがある。
たぶんよまないであろう本もなぜかレジにはこぶ。
「本の雑誌」の特集で、
むかしながらのいわゆる古本屋さんめぐりをなつかしくおもった。

スポンサードリンク



posted by カルピス at 09:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック