2013年12月01日

ついまたみてしまった『ルパン三世 カリオストロの城』

ヤフーの玄関ページに『カリオストロの城』が無料配信となっていたので、
ついクリックしてしまった。
なんどもみてるのに、みはじめるとズルズルとそのままいってしまう。
わたしがわるいわけではなく、これもすぐれた作品がもつ罪なのだろう。
先日よんだ岡田斗司夫さんの本は、この作品を参照にしながら
宮ア駿監督の演出を分析されていた。
それを意識しながらオープニングにも注意してみるけど、
作画枚数をはぶいて省エネをしてようには、わたしにはみえない。
とまっている絵であっても、
それを「必然」のコマとおもわせるのが、宮アさんのうまさだ。

『カリオストロの城』は有名な作品なので、
ほとんどのひとがいちどはみたことがあるのではないか。
シトロエン2CVやフィアット500が町をはしっているのをみかけたとき、
いっしょにいたひとに「ほら、あのカリオストロでクラリスがのっていた・・・」
と説明するとたいていのひとはおもいだしてくれる。

いちどみはじめると、とちゅうでやめられない魅力は
さっきかいたとおりだ。
うごきとストーリーはもちろん、
セリフも気がきいている。
わたしがすきなのは、

・不二子がこっそりとファイルをかくしカメラにとっているときに、
 「仕事に熱中してるご婦人ってのは、うつくしーねー」

・クラリスの部屋にしのびこんだルパンが、
 ドロボーはなんだってできる、と力説しながら
 手品みたいにちいさなバラをとりだす。
 「いまはこれが精一杯」
 (いまはこれが精一杯、ってときが、よくあるなー)

・城にしのびこむことに失敗した次元は、望遠鏡をのぞきながら、
 ルパンがうごきだすのをただひたすらまっている。
「まつしかねーか」
 (そうなのだ。まつしかないときは、まつしかないのだ。
 そして、そういうときが人生には、しょっちゅうある)

・クラリスにわかれをつげにきた不二子が、
 「もうちょっといるつもりだったけど、ルパンがきたでしょ。
 めちゃくちゃになっちゃうから、もうかえるの」

・青二才のころ、カリオストロにもぐりこもうとしたルパンが
 ケガをしてみうごきできなくなる。ぐったりしていると、
 まだおさないクラリスが、カールとともにあらわれた。
 「どうやら年貢のおさめどきがきやがった」
 (そんなふうに、ジタバタしないでさいごをむかえられる覚悟がすきだ)

・偽札工房にもぐりこんだ銭形警部がカメラにむかって、
 「ん?あそこにあるのは!ニッポンの札、これは偽札だ〜!
 ルパンをおっててとんでもないものをみつけてしまった、
 ど〜しよ〜」
 (わざとらしい棒よみが効果的)

さいごの場面で湖の水が城内にながれこみ、
湖の底にかくされていたローマ遺跡があらわれる。

「ローマ人がこの地をおわれるとき
水門をきずいてしずめたのを
あんたのご先祖さまがひそかにうけついたんだ」

とルパンがクラリスにはなしている。
かつてその土地にすんでいたローマ人を
ゴート族がおいだしたのは、
ゲルマン民族の大移動の史実どおりだ。
ゴートといえばヤギであり、
クラリスのつけていた指輪の紋章にヤギがえがかれていたのは、
クラリスがゴート族の末裔だったからと、
この作品はヨーロッパの歴史について
最低限の基礎知識をもっていることを、わたしたちにもとめている。

いくら自分に指輪をもたらさなかったからといって、
うつくしいクラリスをころそうとしなくてもよさそうなのに、
伯爵はクラリスをまったく大切にしない。
このいかり・にくしみがわたしには理解しにくいけれど、
おそらく歴史的な両家の関係が背景にあるのだろう。
400年ものあいだカリオストロ家につかえてきた伯爵家は、
よごれた仕事をずっとさせられてきたし、
ひどい目にもあわされた過去をせおっている。
カリオストロ家の人間は、だれであろうとゆるせないほどの
根本的ないかりを伯爵はかかえている。
偽札づくりで「お金」はじゅうぶんにありながら、
たかだか先祖からうけついだという「お宝」を
必死になってほしがるのは、
財産めあてというよりも、
カリオストロ家への復讐であるからだろう。

うつくしい城にすみ、そこで絶対の権力者としてふるまい、
わかくてうつくしい花嫁をむかえられるのだから、
指輪くらい、あるいは財宝くらいあきらめたらいいのだ。
『未来少年コナン』のレプカでさえ、
さいごにはすこしかわいそうにおもえてきたのに、
このカリオストロ伯爵にはその気もちがまったくわいてこなかった。   
あまりにもクラリスがうつくしすぎるため、
悪役にてっするしかなかった伯爵のかなしみがそこにある。

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posted by カルピス at 16:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 宮ア駿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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