2014年01月13日

「お泊りデイサービス」事業者だけがわるいのではない

けさの朝日新聞に「お泊りデイサービス」がとりあげられていた。
はじめてきく名前なので、なんのことかとおもったら、
デイサービスの利用者が、
家にかえらずにそのまま事業所にとまることなのだそうだ。
デイサービスは、文字どおり日中の活動を提供するサービスであり、
「お泊り」「デイサービス」は、相反することばをふたつならべたことになる。
夜とまるサービスは、ふつうならショートステイがうけもつ役割だ。

「お泊りデイサービス」は介護保険の適応外のサービスであり、
1泊1000円ほどの料金でひきうけているところがおおいらしい。
ショートステイをうけいれる事業所がたりないことで、
こうしたあたらしいサービスがうまれたという。

新聞には、「お泊りデイサービス」は職員体制がじゅうぶんではなく、
利用者への配慮がたりない状況が放置されていると、
事業所にたいして批判的なかきかたがされている。
しかし、1泊1000円で、どうやって手あついサービスをしろというのだ。

なぜ1000円というやすい料金でやれるかというと、
夜のおとまりは、ひるまのデイサービスにくる利用者を
確実に確保するための「付録」としての位置づけであり、
ショートステイのような手あつい体制をとるつもりなど
はじめからないのだ。
これは、事業所をせめていわけではない。
ショートステイのような職員配置を実現させると、
利用料は1万円くらいになるはずで、
1泊1000円は、値段だけでいうなら、
利用する側にとってとてもたすかるサービスだ。
手あついからといって、1万円を家族ははらう覚悟があるのか。

記事には、あずけていた父親が救急車で病院へはこばれ、
納得のいく説明がないまま2ヶ月後になくなった、という例が紹介されている。

「『父には本当にかわいそうなことをした』。
今も悔やみきれない」

と、家族の方はかなしまれている。
こうした不幸な例はほかにもあるかもしれない。
しかし、このひとは、いったい一晩1000円で、
どれだけのことをしてもらえるとおもっていたのか。
じゅうぶんな職員体制ではないとしりつつ、
それでもほかにあずけるところがないから、
「お泊りデイサービス」におねがいしている家族がおおいはずで、
事業所をやりだまにあげるだけでは責任のある報道とはいえない。

やすければ利用する側はたすかるが、
事業所としては経営できない。
行政がきびしい基準をしけば、
事業所はサービスから手をひかざるをえず、
いまのままではこまるのはけっきょく利用者だ。
事業所・利用者(と家族)・行政という三者は、
ますますたかまるであろう「おとまり」のニーズに、
これからどう対応していけばいいのだろう。
わたしにいえるのは、ひくすぎる料金設定ではなにもできないということで、
いまのまま介護保険の適応外という位置づけをつづけていては、
事業者も利用者も、おたがいが満足できる体制はとれない。

2025年には、団塊の世代が本格的に介護を必要とするようになり、
いまのしくみでは対応しきれないのでは、と心配されている。
そのころには、ショートステイの需要がふえ、
しかし事業所のうけ皿はいっぱいで、
ますます「お泊りデイサービス」が必要な状況になっているだろう。
記事によると、

「厚生労働省はこれまでお泊りデイを黙認し、
実態も把握していない。
ようやく15年度から、介護保険を適用しないものの、
基準を作って届け出制にしたり
自己報告などを義務づけたりすることを検討している」

とずいぶんのんびりした対応だ。
しかし、状況はもっとさしせまっている。
全国にある3万7000ヶ所のデイサービスのうち、
1割ちかい3000ヶ所が「お泊りデイサービス」を提供しているといい、
これだけのニーズがあれば、厚生労働省は
いつまでも無視しつづけるわけにいかないはずだ。

介護保険適応外のサービスについて、
これからもにたような問題がおこってくるだろう。
行政にはお金がなく、できるだけ支出をともなわない
あたらしいしくみにたよりたいはずだ。
利用する側も、1000円程度しはらったからといって
まかせっきりにするのではなく、
手あついサービスをもとめるのなら、
もっと負担する覚悟をきめたほうが現実的だ。
やすければやすいなりのサービスでしかない。
サービスにはお金がかかる。お金をおしむと質がさがって、
けっきょくはおたがいがしあわせになれない。

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posted by カルピス at 14:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 介護 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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