2014年02月20日

赤信号をどうやってわたるか(あるいはわたらないか)

きのうにつづいて星野博美さんの『謝謝!チャイニーズ』から。

中国の交通渋滞は、歩行者が信号をまもらないことが原因だという。
どんなに交通量がおおい道路でも、
中国の人は、自分がわたりたいところでわたろうとする。
信号や横断歩道を、まもらなければならないものとおもっていない。
そんな中国から日本にもどると、車がとおらないときでも
赤信号を忠実にまもるひとがおおく、
星野さんは「いやな感じ」がするのだそうだ。

「そんなに周りの人間と違った行動を取るのが怖いのか。
そこまでして守らなければならない秩序とは、
我々にとってどんな意味があるのか。そういいたくなる。
私がいやなのは、信号を守る人間ではなく、
赤信号でも渡ってしまう人間を見つめる、その他大勢の目だ。
秩序を乱して独自の行動を取る人間に浴びせられる、
ちょっぴり羨望の混じった高圧的な空気。
規則に従ってりゃ安全だという事なかれ主義。
ところが何人か秩序を乱す者が現れると途端に気が大きくなって、
手を取りあって行動を共にしようとする傲慢な無責任」

わたしは、車がこなければできるだけわたるほうだ。
子どもがちゃんと信号をまもっているときは
さすがにわたらないけど、
とくにさしさわりがない場面では、安全をたしかめたうえでわたることにしている。
でも、よくかんがえると、さしさわりがあるときこそ、
断固としてわたるべきなのだ。
子どもからみたらとんでもない行為でも、
それはそれで彼らがなにがしかをじぶんでかんがえるだろうし、
信号をまもるタイプのおとなにも、インパクトがある。
さしさわりがあるときに赤信号をわたるだけの気概がわたしにはなく、
自分よりもまわりに行動の基準があるというのはいやなかんじだ。
でも、うえつけられた価値観はいまさらかわりそうにない。
わたしもまた、典型的な日本人であることをかんじるときだ。

日本人は、交通マナーがすぐれているわけではない。
ドライバーがまもるのは信号機だけだ
(黄色になっても、赤にかわってもつっこんでくる車はおおいけど)。
横断歩道のそばで歩行者がまっていても
信号がなければ、とまる車はほとんどない。
とびだし注意の路地などでは
歩行者のほうが注意しなくてはいけないし、
自転車にのっていると、
ドライバーがいかに自転車をかろんじているかよくわかる。
その程度のおそまつな交通マナーなのに、
赤信号だけはしっかりまもるというのが日本流だ。

ドイツでは、日本に輪をかけて、ぜったいに車がこないとわかっていて、
まわりにひとがいなくても
信号をまもらなければならないという。
それはそれで、いかにもドイツらしい。
カナダでは、歩行者を目にしたドライバーは
かならず車をとめてくれたのでおどろいたし、かっこよくおもえた。
ネパールでは、まったくじゃまにならないところをあるいていても、
はるかとおくからクラクションをならされるので頭にきたものだ。
国や民族性によって、歩行者と自動車のちから関係はさまざまで、
そのなかでも日本の赤信号への反応はいかにも日本的だ。
よくある沈没船ジョークでは、
船をおりるように説得するときに、国べつに効果のあることばがわかれている。

アメリカ人に対して・・・「飛び込めばヒーローになれますよ」
イタリア人に対して・・・「海で美女が泳いでいますよ」
フランス人に対して・・・「決して海には飛び込まないで下さい」
イギリス人に対して・・・「紳士はこういう時に海に飛び込むものです」
ドイツ人に対して・・・「規則ですので海に飛び込んでください」


そして日本人には「みんなとびこんでいますよ」というのだから、がっかりする。
まわりをみて自分の行動をきめるのはすごくかっこわるい。

中国は、だれも横断歩道や信号をまもらないので、
道路にそってハードルをおき、物理的にわたれなくしたという。
道路をよこぎらないと、歩道橋まで何分もあるかないといけないので、
中国人はハードルをよじのぼる。
ひとがいても、車はスピードをおとしてくれるわけではなく、
道路をわたるのはすごくあぶない。
星野さんは中国人の無秩序を非難するのなら、自分はルールをまもろうと、
だいぶとおまわりをして歩道橋をわたることにする。
でも、歩道橋では不自由な自分のからだをみせつけて、
ものごいをするひとがたちふさがっていた。
お金をださなければ、かんたんにはとおしてくれないのだった。

「なぜ多くの人たちが危険を冒してまで、
ハードルを越えようとするのか、わかった気がした。
この歩道橋を平然と通り過ぎることに比べたら、
ミニバスにはね飛ばされる危険を覚悟する方が、
精神的にはよほど楽だ。
それから私は、ハードルをよじ登るのが少しだけ得意になった」

その国には、その国なりのさまざまな事情があり、
かるがるしく批判はできない。
自分がわたりたいところで道をわたる中国人は、
まわりがわたらないから自分もわたらない日本人より、
まだ正常な感覚のようにおもう。

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posted by カルピス at 21:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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