2014年04月14日

よむまえの「感想」とはぜんぜんちがっていた じっさいの『驚くべき日本語』

『驚くべき日本語』(ロジャー=パルバース・集英社インターナショナル)

きのうは新聞にのった書評をよんだだけで、
本の内容を想像し、「感想」をかいた。
じっさいは、どんなことがかいてある本なのだろう。
さいわい近所の本屋さんにあったので、すぐにかってよんでみる。
残念ながら、書評から予想していたのとはほとんどちがう内容で、
わたしとしては かたすかしをくったかんじだ。

「まえがき」であっさりと

「日本語の読み書きが非常にむずかしいというのはたしかです。
日本人にとってさえ、そうでしょう。
わたしはただ、この本では基本的に『話し言葉』としての日本語について
考えてみたいと思います」

と、この本は「話し言葉」としての話題にとどまることを宣言されてしまう。
わたしが予想していた「漢字がなければ」という記述はどこにもなかった。

著者のロジャー=パルバース氏は、ながねん日本にすみ、
日本文学にしたしまれている方のようだ。

構成をみると、

第1章 言葉とは何か
第2章 日本語は曖昧でもむずかしい言語でもない
第3章 日本語ー驚くべき柔軟性をもった世界にもまれな言語
第4章 世界に誇る美しい響きの日本語とは

となっており、まるで言語学者がかいたような内容だ。

・日本語は「かな」を足すだけで、別のニュアンスを加えられる
・日本語の名詞は「てにをは」を使うだけでどんな格にもなれる

など、日本語の(はなしことばとしての)特徴がこまかくのべられている。
非常に専門的にみえるが、それがただしいのかどうかは
わたしには判断がつかない。
ただ、研究者は「世界に誇る」なんて表現はつかわない。
著者はようするに日本語がだいすきな外国人であり、
なにかにつけて日本語のすばらしさを強調している。

最後の第5章は「世界語(リンガ・フランカ)としての日本語」となっている。

「もし日本語が植民地で国際語化していたら、
日本語はどうなっていたか?」

という「もし」には興味があるところだ。
しかし、タイトルとはたいして関係ないことがかいてあり、
ここでもわたしが期待していた内容はなかった。

おわりのほうで、かろうじて かくときの日本語についてふれている。

「この本はおもに日本語の話し言葉について考えてきましたが、
もちろん書き言葉のことも考慮しなければならないでしょう」
とある。

しかし、

「たしかに書き言葉としての日本語は、
漢字に多くの読み方があることから、
日本人にとっても非日本人にとっても一筋縄ではいかないくらい
むずかしいと思います。
たとえ日本語が他の国々に広がっていったとしても、
おそらくローマ字のアルファベットか、
よりありえることとして、カナとローマ字を併用することになったかもしれません」

と、それだけにとどまっている。
わたしとしては、世界語としての日本語についてかくのであれば、
表記法をどうするのかまで ろんじてほしかった。
はなしことばだけがひろまることなど、じっさいにないわけで、
ことばをならうときには、いっしょにかきことばにも当然ふれることになる。
そのときに、どういうかたちなら、日本人でないひとが
日本語をまなびやすいかについての、現実的な提案を期待していた。

さいごに、

「日本語が非日本人にとって、学習したり使いこなしたりするのに
むずかしくない言語であることを思えば、
日本語が世界の共通言語(リンガ・フランカ)の一つとして
非常に重要な役割を果たすに違いないと思います」

とし、それには
「ある二つの条件がみたされれば」
と著者はつづけている。
そのふたつとは、いったいなにか。

ひとつ目は
「日本人が、日本語はある種の『特別な』暗号、
日本民族の意思伝達にのみ有効な暗号だという誤った考えを捨てることです」
これはわかる(そんなこと、おもったこともないけど)。
ふたつ目は
「日本人として、日本語の美しさの本質が、
日本の詩人や作家たちが創造してきた奇跡のような描写、
世界や人間の本質についての表現にあるということに気づくことです」
これはいったいなにがいいたいのだろう。
こんなふうに、著者のかく日本語は、すこしずつどこかずれている。

自分がもとめていることがかいてないからといって、
やつあたりをしてはならないだろう。
きのうのブログは我田引水がすぎたのだ。
しかし(しつこい!)、表記法にふれずにおいて、
いったいどうリンガ・フランカの可能性をいえるのか。
書評にひかれてよんでみた『驚くべき日本語』は、
とくにおどろくべき内容ではなかった。
書評氏は、なにがかいてあるのか
ほんとうに理解して紹介したのだろうか。

よんでもいないのに、書評から想像して「感想」をかくなんてするから、
へんなことになってしまった。
自分から小石に足をひっかけておいて・・・、いや、もうやめておこう。
まあ、わたしがおもっているような内容の本だったら
あたらしい本として いまさらかかれるまでもないだろうし、
わたしもまた、わざわざかう必要もない。
期待はずれで内容にも共感できなかったけど、
自分のあさはかさをいましめる一冊となった。

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posted by カルピス at 08:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 表記法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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