2組の夫婦が、1軒の2世帯住宅をシェアしてくらしている。
仕事やお金にとらわれず、自由で気ままに生きようとはじめた共同生活なのに、
だんだんと4人のおもいがずれていき、
以前みたいにはたのしく くらせなくなっていく。
4人がすむ家は、赤レンガづくりでツタがおいしげっている。
だから、アイビー・ハウス。
4人の関係には、この家の存在が、ずっとカゲをおとしている。
2組の夫婦とも、おたがいの関係、そしてもういっぽうの夫婦との関係が、
まえほどすっきりしたものではなくなってきた。
すこしずつ、気づいたときには決定的に、というのがこわいところで、
身につまされるおもいでよむ。
ルース=レンデルの作品をおもいだした。
家の魔力に4人がしばられて、だんだんとおたがいの気もちがずれていく。
作品にひきこまれながら、夫婦・友人という
関係がずれていくときのこわさにときどきゾクッとする。
おもな登場人物は2組の夫婦、つまり4人しかいない。
でもわたしは名前と仕事がなかなかおぼえられず、
なんどもまえの記述をよみかえした。
ついにはロシアの小説をよむときみたいに、
とびらにちかい空欄に 4人のひととなりをかきこんで、
なんども確認しながらよんだ。
正社員・派遣・アルバイト・フリーと、4人のスタイルはそれぞれだ。
でも、そんなことはよくあることなのに、
たった4人がおぼえらえないのは、
原田ひ香が確信的なたくらみでややこしくしているのか、
わたしの記憶力に問題があるのか。
4人の関係は、やがてつくろえないほど変化し、
それぞれがバラバラにわかれてくらすことになる。
こわれたというより、またスタートにもどったかんじだ。
「経済も結婚も企業も社会も節約も子供も、
なんだか、すべてがばかばかしい。
いったい自分たちはこれまで何をしてきたんだろう」
夫とわかれ、アパートへひっこすことになった薫は、
すべてがふっきれたように、こうかんじた。
これは、わたしの人生観にちかい。
だから原田ひ香の小説にひかれるのだろう。
原田ひ香の作品は、どれも独特な味があるなかで、
この本はいっけんするとふつうの小説だ。
しかし、無常感が底にただよっており、
どうでもいいし、なんでもあり、という
かわいた気もちにさせてくれる。
「お金にとらわれないようにって、言えば言うほど、
人はとらわれて行くのよ。誰でもそうなの」
なにかにとらわれることから
ひとはなかなか自由になれない。
深刻にかんがえたところで、ひとのやることはどうせ
たかがしれている。
いろんなことに意味をもとめないで、気らくに生きていけたらいいのに。
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