2014年05月07日

介護事業所における「武士の家計簿」

『武士の家計簿』(磯田道史・新潮新書)をよみだす。
江戸から明治にかけて、世襲制の時代でありながら、
計算ができるひとは、家がらがよくなくても
お城での仕事につくことができたそうだ。

「親は算術が得意でも、その子が得意とは限らない。
したがって、藩の行政機関は、どこもかしこも厳しい身分制と世襲制であったが、
ソロバンがかわわる職種だけは例外になっており、
御算用者は比較的身分にとらわれない人材登用がなされていた」

「実は『算術から身分制度がくずれる』という現象は、
18世紀における世界史的な流れであった。(中略)
フランスでもドイツでも、軍の将校といえば貴族出身と相場がきまっていたが、
砲兵将校や工兵、地図作成の幕僚に関しては、そうでなかったという。(中略)
余談であるが、ナポレオンが砲兵将校であったことは興味深い」

事業所におけるわたしの存在も、これとすこしにたところがある。
わたしは計算が特別にできるわけではないけれど、
まわりのひとがやりたがらないおかげで、
事務を中心とした仕事にありついている。
この場合、計算というよりも、もうすこしひろくとらえての実務力だ。

いまの時代、介護事業所といえどもある程度の実務力が必要、
と研修などでよくいわれる。
じっさいに、ある程度の実務力とは、どれだけのことをいうのだろう。

介護事業所でもとめられるのは、
適切な支援計画をたて、それを利用者・家族、そして職員全体で共有し、
実行していくちからだ。
よい支援計画をたてるためにはデーターをとり、
それをわかりやすいかたちでパソコンや紙におこしていく。

ということからかんがえると、
パソコンはつかえなければならない。
ポツリポツリうっていたのでは仕事にならないので、
当然タッチタイプ、といいたいところだけど、
そこまではもとめられないだろう。

行政や保護者にむけた文章をかくことがあるので、
文章力もあったほうがいい。
しかしこれは、形式だけをもとめられ、内容はどうでもいい部分なので、
ひな形をつかえばすむことがおおい。
それでもじゅうぶんやっていけるので、あまり気にすることはない。

パソコンについていえば、ワープロソフトやプレゼンテーションソフトは
そんなに重要ではない。
文章はエディターでじゅうぶんだし、プレゼンテーションもすぐにできる。
つかえたほうがいいのは表計算ソフトとデータベースソフトだ。
わたしの場合はエクセルとファイルメーカーになる。
わたしはたまたまファイルメーカーをいくらかあつかえたので、
どれだけ便利をしたことか。
データーをとるだけでなく、日誌や利用予定などの書類、
それに会計の帳簿など、
ファイルメーカーがなければわたしの事務仕事は
まえにすすまなかっただろう。
わたしにおける『武士の家計簿』は、
ファイルメーカーだったといえる。
データベースソフトは、その便利さにもかかわらず
敷居がたかいのか、つかえるひとがあまりいない。
わたしが事業所でもっともらしい顔をしていられるのは、
ソロバンのかわりとなる、ファイルメーカーのおかげだ。
といって、ものすごくじょうずにあやつれるわけではない。
その中途半端な能力が、介護事業所のもとめる実務力にピッタリなのかもしれない。

介護事業において、いちばん大切なのは、
あつい情熱と、適切な支援力である。
しかし、これだけではやっていけなくなっているのもたしかだ。
ある程度の実務力が必要なおかげで、
家柄がいいわけでもなく、学歴もひくい(大学中退)わたしが、
仕事につくことができた。
わたしはナポレオンのように壮大な夢をえがいているわけではない。
実務力のおかげで、なんとか糊口をしのげることに感謝している。

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posted by カルピス at 13:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 児童デイサービス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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