2014年06月18日

『オシム73歳の闘い』オシムさんによる協会の一本化から すべてがはじまった

録画しておいた『オシム73歳の闘い』をみる。

今回のWカップに初出場するボスニア=ヘルツェゴビナは
2011年までFIFAから加盟をとりけされていた。
モスリム系・セルビア系・クロアチア系と、3つの民族が
それぞれの権利を主張し、サッカー協会が分裂していたからだ。
FIFAは協会の一本化にむけて、オシムさんを正常化委員会の委員長に指名する。
この番組は、オシムさんが各民族の代表と交渉し、一本化を実現させる過程、
そしてボスニアの代表チームがヨーロッパ予選を1位で通過して、
Wカップ本大会への出場をきめるまでをえがいている。

取材は『オシムの言葉』の著者、木村元彦さんによっておこなわれた。
何年かぶりにみるオシムさんは、
まえよりもやせてしまったようにみえる。
脳梗塞のマヒにより、介護者のつきそいが必要だし、
ながらくイスにすわることもできない。
まだ74歳だというのに、あるくのもたいへんそうだ。
でも、なにかひとこと皮肉らないと気がすまないのはあいかわらずで、
なにかといってはたとえばなしをもちだして まわりをケムにまく。

オシムさんが旧ユーゴの代表監督をしていたときにも
3つの民族をまとめるのに苦労し、
やがてはじまった内戦へ抗議するために辞任している。
旧ユーゴが7つの国にわかれたいまも、
民族問題は依然としてつづいている。
オシムさんはコスモポリタンをなのり、
「どこの民族だ?」とたずねられると
「サラエボっ子」とこたえるという。
そんなオシムさんだからこそ、3つの民族をまとめる役がまわってきたのだし、
各民族の代表者もオシムさんの伝説的な経歴に敬意をはらっていた。
どの民族からも距離をおき、だれからも信頼されるオシムさんでなければ
この任務はなしとげられなかっただろう。

ボスニアはヨーロッパ予選の終盤まで1位につけ、
最終のリトアニア戦で予選通過をかけ たたかうことになる。
この試合に、おおげさでなく世界中からボスニア出身者が応援にかけつけていた。
サッカーの代表チームは、そのままボスニアを象徴する存在となっている。
自分の国を応援できる機会は、サッカーにおいてしかない。
自分たちのチームをこころからまちのぞんでいたひとたちの母国愛は、
わたしの想像をはるかにこえる切実なものだ。

試合は1-0でボスニアが勝利をおさめ、
応援にかけつけたオシムさんにまわりのひとたちがおめでとうをいう。
オシムさんもさすがにうれしそうで、目には涙がにじんでいた。
会場をでると、オシムさんのすがたをみたサポーターたちが、
「イヴィツァ=オシム!イヴィツァ=オシム!」と大声で名前をくりかえす。
オシムさんの尽力がなければ、予選にすらでられなかったことを
だれもがしっているのだ。
そして、とうとう自分たちの代表がWカップの本大会に出場できる。
すべてはオシムさんのはたらきかけからはじまった。

Wカップの初戦、アルゼンチン戦では1-2とまけてしまったが、
ボスニアはまもりつづけたわけではなく、
ずっとまえにでる姿勢をしめしてくれた。
日本も1998年にはじめて出場したWカップでアルゼンチンと初戦でたたかい
0-1でやぶれている。0-1といっても内容は圧倒的にアルゼンチンの試合で、
その試合にくらべれば、ボスニアははるかにいい試合をした。

メッシが2点目をきめる。
いつものように右サイドから左にきりこみながら 痛烈なシュートをはなつ。
ボールはポストにあたり、そのまま反対側のネットをゆらした。
メッシはなんどもほえて よろこびをはじけさせている。
前大会はメッシの大会かといわれながら ゴールなしにおわり、
今大会も体調不良がつたえられていた。
そのなかでの自分らしいゴールはよほどうれしかったのだろう。
その後メッシとチームは、生まれかわったようにいきいきとうごきはじめる。

ボスニアが得点をきめたのは後半の40分だ。
左サイドからのシュートがキーパーの股をぬけて
ゆっくりとゴールへところがった。
メッシのはなった強烈なシュートとは対照的なボテボテゴールだったけど、
初出場のボスニアにとって記念すべきゴールで、
ボスニアもその後いきおいをとりもどした。

そういえば、前大会ではアルゼンチンの監督をつとめたマラドーナ氏について、
今大会は はなしをまったくきかない。
勝敗をたかい確率でおしえてくれたタコのパウルくん的な話題もない。
外野にふりまわされず、試合に集中できる大会とよろこぶべきだろうか。

2007で脳梗塞にたおれ、代表監督をしりぞいたオシムさんが
そのまま日本チームを指導していたら、という「もしも」から
なかなかはなれられない。
オシムさんが目ざした日本的なサッカーとは
どんな姿だったろう。
その完成形を、なんとしてもみたかった。
体調が万全でないいまのオシムさんに、
さすがに代表監督をおねがいすることはできないけれど、
「もしもオシムさんがあのまま・・・」は
おおくのサッカーファンが いまもなお あきらめきれない夢となっている。

ボスニア=ヘルツェゴビナは22日(日)にナイジェリアと対戦する。
ボスニアの出場がきまったときオシムさんがいったのは、
「これで日本と試合ができるな」だった。
ボスニア=ヘルツェゴビナと日本の2戦目に期待する。

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posted by カルピス at 11:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | サッカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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