ジブリの新作『思い出のマーニー』の宣伝をかねているようだ。
『トトロ』はこれが14回目の放映なのに、
そしてビデオももっているのに、なんとなくソワソワしてしまう。
なんだかんだいったって、わたしはトトロの世界がだいすきなのだ。
鈴木敏夫さんが『仕事道楽』(岩波新書)のなかで、
高畑勲さんの発言を紹介している。
「宮ア駿のもたらした最大の恩恵はトトロだとわたしは思う。
トトロは普通のアイドルキャラクターではない。
彼は所沢だけでなく、
日本全国の身近な森や林にくまなくトトロを住まわせたのだ。
トトロは全国のこどもたちのこころに住みつき、
こどもたちは木々を見ればトトロがひそんでいることを感ずる。
こんな素晴らしいことはめったにない」
ほんとうだ。日本にはトトロがいるのだ。
どうにもならないときには、トトロがちからをかしてくれるし、
ネコバスだってかけつけてくれるかもしれない。
こんもりと木々がおいしげる森にトトロがすむのは、
日本の子どもたちにとって常識である。
木をきり、森をなくしてしまえばトトロにあえない。
だからトトロのすむ森を、わたしたちは大切にまもらなければならない。
外国の、たとえば中国の子どもたちに『トトロ』をみせたら
どんな反応をしめすのだろう。
「かわいい」でも「ステキ」でもいいけど、
その存在をしんじられるだろうか。
中国や韓国にも、なにかはいるだろうけど、
それはトトロではなく、べつの生物のような気がする。
トトロはいまもまた、日本の、どこかの森にすんでいるのだ。
糸井重里さんのコピー、
「このへんないきものは、まだ日本にいるのです。たぶん。」は、
だからとてもうまい。
1988年につくられたこの作品は、
劇場ではあたらずに、テレビでの放送や
関連グッズのうりあげでだんだんと人気がでたのだという。
『トトロ』は『火垂るの墓』といっしょに上映されており、
アニメとはいえあまりはなやかさのないくみあわせだ。
おさない子どもをもつ保護者たちは
この二本だてに足をはこびにくかったとおもう。
もちろんわたしは1988年の春に劇場でみた。
オープニングからサービス満点なのですごくうれしくなり、
作品の世界にひたって なんどもおおわらいする。
精神の開放を、はじめて体験したのだとおもう。
上映から26年がたった。トトロはまだ日本にいるのだろうか。
26年くらい、トトロにとってなんということのない年月のはずで、
問題があるとしたらわたしたちの側だ。
「たぶん」まだいる、といいたいけれど、
それは子どもたちがきめることだろう。
トトロがすむ森くらい、世界に自慢できるものはない。
クールジャパンより、ずっとすばらしい。
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