2014年07月11日

トトロがすむ森くらい、世界に自慢できるものはない

新聞のテレビ番組欄をみると、夜9時から『となりのトトロ』を放送するという。
ジブリの新作『思い出のマーニー』の宣伝をかねているようだ。
『トトロ』はこれが14回目の放映なのに、
そしてビデオももっているのに、なんとなくソワソワしてしまう。
なんだかんだいったって、わたしはトトロの世界がだいすきなのだ。
鈴木敏夫さんが『仕事道楽』(岩波新書)のなかで、
高畑勲さんの発言を紹介している。

「宮ア駿のもたらした最大の恩恵はトトロだとわたしは思う。
トトロは普通のアイドルキャラクターではない。
彼は所沢だけでなく、
日本全国の身近な森や林にくまなくトトロを住まわせたのだ。
トトロは全国のこどもたちのこころに住みつき、
こどもたちは木々を見ればトトロがひそんでいることを感ずる。
こんな素晴らしいことはめったにない」

ほんとうだ。日本にはトトロがいるのだ。
どうにもならないときには、トトロがちからをかしてくれるし、
ネコバスだってかけつけてくれるかもしれない。
こんもりと木々がおいしげる森にトトロがすむのは、
日本の子どもたちにとって常識である。
木をきり、森をなくしてしまえばトトロにあえない。
だからトトロのすむ森を、わたしたちは大切にまもらなければならない。

外国の、たとえば中国の子どもたちに『トトロ』をみせたら
どんな反応をしめすのだろう。
「かわいい」でも「ステキ」でもいいけど、
その存在をしんじられるだろうか。
中国や韓国にも、なにかはいるだろうけど、
それはトトロではなく、べつの生物のような気がする。
トトロはいまもまた、日本の、どこかの森にすんでいるのだ。
糸井重里さんのコピー、
「このへんないきものは、まだ日本にいるのです。たぶん。」は、
だからとてもうまい。

1988年につくられたこの作品は、
劇場ではあたらずに、テレビでの放送や
関連グッズのうりあげでだんだんと人気がでたのだという。
『トトロ』は『火垂るの墓』といっしょに上映されており、
アニメとはいえあまりはなやかさのないくみあわせだ。
おさない子どもをもつ保護者たちは
この二本だてに足をはこびにくかったとおもう。

もちろんわたしは1988年の春に劇場でみた。
オープニングからサービス満点なのですごくうれしくなり、
作品の世界にひたって なんどもおおわらいする。
精神の開放を、はじめて体験したのだとおもう。

上映から26年がたった。トトロはまだ日本にいるのだろうか。
26年くらい、トトロにとってなんということのない年月のはずで、
問題があるとしたらわたしたちの側だ。
「たぶん」まだいる、といいたいけれど、
それは子どもたちがきめることだろう。
トトロがすむ森くらい、世界に自慢できるものはない。
クールジャパンより、ずっとすばらしい。

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posted by カルピス at 22:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 宮ア駿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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