ピピは放課後等デイサービスを提供する介護事業所で、
県に事業申請がみとめられた2年まえの7月から営業をはじめている。
障害をもった子の放課後を支援するのがおもな業務内容で、
夏やすみなどの長期休暇には、朝から利用できる。
「障害をもった子」といっても、特別支援学校だけが対象ではなく、
普通学級にかよいながら、なんとなく
クラスや学童保育になじめない子どもたちも ピピで放課後をすごしている。
国の政策として運用されているサービスなので、
だれでもというわけにはいかないが、
福祉手帳をもっていなくても、つまり障害名がなくても、
療育が必要とみとめられれば利用できるので、
つかいやすいサービスといえる。
わたしたちがめざすのは、たのしい放課後だ。
具体的には、ピピでおやつをたべたりあそんだりしてすごすわけだけど、
おとなの都合やたてまえによる指導・訓練の場所ではないし、
もちろん学校の延長線上の機能をはたすわけでもない。
たのしいはずの放課後が、退屈で空白な時間にならないように、
「あーおもしろかった」と子どもたちが満足してすごせる場であること。
子どもたちは、自分が個人としてみとめられていることをかんじると、
安心して自分たちの世界をひろげていく。
とはいえ、営業をはじめた2年前の夏やすみは、
利用者がいちにちに1〜3人ほどで、
なかにはゼロの日もなんにちかある さびしいものだった。
これではもちろん採算がとれないわけで、
そのあとすこしずつ利用がふえていったものの、
けっきょく1年目の年度はひどい赤字におわり、
わずかな給料しかはらえなかった。
かざむきがかわってきたのは2年目からで、
障害特性に配慮した支援内容がすこしずつみとめられて
「ピピでないと」、という子どもたちが利用してくれるようになった。
3年目となる今年の夏やすみは、
どうしたら利用者数を 平均12人以下におさえられるかと 苦労している。
ピピの定員は1日あたり10名となっており、
規則によると3ヶ月の平均が12.5人をこえてはならない。
夏やすみがおわってからの平均人数もかんがえなければならず、
わたしにはむつかしすぎる算数なので、なげだしてしまった。
これ以上、利用をふやせない状況なのはたしかだ。
市内には、ピピとおなじサービスを提供している事業所が10ヶ所あり、
なかには第2、第3の事業所をひらいているところもある。
あたらしく事業をはじめようとしたときに
あまり設備投資がいらないし、わりと採算ベースにのせやすいことから、
たった3年のあいだに乱立ぎみの状態になってしまった。
先日よんだ『医療にたかるな』のように、必要ないひとまでサービスをつかっていると、
きわめてちかい将来に財源は破綻するだろう。
老人介護がたちゆかなくなったときに、3年前まではなかったサービスが
どこまで必要性をみとめられるかについて、あまり楽観的になれない。
いまは需要があるからといって、ピピの第2営業所をひらくのはためらわれる。
ピピの母体はNPO法人であり、民間の事業所としてかんがえたいのは、
福祉施策からはなれたサービスだ。
町づくりやひとづくりに、採算をもとめながらピピがかわること。
放課後等デイサービスとしての充実は必要だけど、
そればかりではさきゆきがあまりたのしくない。
「あーおもしろかった」を自分にももとめていきたい。
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