Wカップブラジル大会の敗因についての特集号。
これがでるのをまっていたのだ。
新聞やネットであれこれ推測され、
つぎの代表監督まできまり、
9月の2試合にむけた23人が発表され、
なんだかすべておわったことになってしまったが、
「なぜかてなかったのか」納得のいくまとめはまだよんでいない。
コンディションがよくなかった、とか、
選手の起用が固定されすぎていた、とか、
ザッケローニ氏に代表監督の経験がないのがいけなかったのだ、とか、
敗因さがしがかまびすしいなかで、
ほんとのところ、なにがどうだったのか。
あの結果から、たしかにいえることはなにか。
いくつかの記事がのっているなかで、
いちばん納得できたのは、西部謙司さんによる
「日本の進むべき道は見えてきたか?」だ。
わたしは以前から西部さんによる解説を信頼しており、
西部さんがブラジル大会をどう総括し、
これからさきへの道すじをしめすかに関心があった。
西部さんは、元代表監督のオシムさんが
就任記者会見で発言したことばを引用し、かきだしている。
「新しい井戸を掘る前に、
古い井戸もみてみるべきだ」
これは
「まだ水が出ている井戸を放棄する必要はない。
つまり、グループリーグで敗退したからといって、
すべてを否定するのはナンセンスだ」
という意味だという。
今回とよくにた状況の8年まえ、ドイツ大会がおわった直後に
オシムさんはそんなことをかたっていたのだ。
西部さんはグループリーグでの3試合をふりかえり、
3試合目のコロンビア戦がいちばん日本らしくプレーできたという。
しかし、だからといって 手ばなしに「よかった」といえるわけではない。
「3戦目にして、ようやく日本らしい攻撃ができたわけだが、
一方で最も点差の開いた試合でもあった。
選手たちが頻繁に口にしていた『自分たちのサッカー』が実現したのに、
結果は1-4。これが次の4年間へのスタートになる。(中略)
いかに良い攻撃ができたとしても、
4失点ではゲームプランが成り立たない。
5得点というシナリオはありえないからだ。
『自分たちのサッカー』は、
Wカップでの勝利を保証するものではなく、
むしろ必敗のシナリオだったとさえいえるかもしれない」
「自分たちのサッカー」が、もしかしたら
「必敗のシナリオ」だったかもしれないなんて、
いかにも西部さんらしい刺激的な分析だ。
結局、まとめとしていえるのは
「攻撃的スタイル実践には不十分過ぎた守備力」
ということになる。
「敵陣でプレーするかぎり、
日本は攻守両面で良いプレーができるし、
強豪国とも渡り合える力を持っていた。(中略)
ところが、『自分たちのサッカー』、攻めきるサッカーで結果を出すには
カウンターに弱すぎた。
捨て身で攻撃にでたときに攻撃力が最大になるかわりに、
そのために生ずるリスクを背おいきれない。
『自分たちのサッカー』を発揮したときには
常に大量失点という結果になっていた。
本来、『自分たちのサッカー』は結果をだすためにある。
スタイルを貫いて負けるのであれば、
スタイルが間違っているということになるはずだ」
「スタイルを貫いて負けるのであれば、
スタイルが間違っているということになるはずだ」
なんてすばらしい「気づき」だろう。
しかし西部さんは「だが、そんなに単純な話でもない」と
さきをつづける。
日本にちかいタイプのメキシコ・チリ・コスタリカが
ベスト16にすすんでいるのだから、
「攻撃に関しては、日本の方向性は正しかったといえるのではないか」。
「当面の課題は攻撃力よりも守備のほうだろう。
引き続き攻撃力も上げなければならないが、
3試合6失点では多すぎる。(中略)
Wカップは失点の少ないチームが優勝する大会である。
フランス、イタリア、スペインは
いずれも7試合2失点で優勝した。(中略)
こういう相手に先制点を許したら、もう勝機はない。
日本が『自分たちのサッカー』の先に優勝があると考えているとしたら、
あまりにも非現実的といわざるをえない」
西部さんは日本がめざす方向の具体的な例として、
サンフレッチェ広島がヒントになるという。
「コンビネーション、ポゼッション、機動力といった日本の長所を含み、
深く引いて人数をかけた守備という 今大会の日本になかった一面も持っている」
むすびのことばに、西部さんはふたたびオシムさんの
「井戸」のはなしをひいている。
「日本にとって参考になるメキシコ、チリは
どちらも継続的な強化を行ってきた。
古い井戸を顧みず、
出るかどうかわからない新しい井戸を掘り始める愚は犯さないほうが
賢明ではないだろうか」
アギーレ監督による新体制は、どちらの井戸に水をもとめるだろう。
今回発表された23名の顔ぶれをみると
ふるい井戸にはあんまり関心のないひとにみえる。
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