2040年までに、全国の896市町村で、若年女性(20〜39歳)が半減する。
「日本創成会議」による このおどろくべき試算が ことしの5月に発表され、
新聞になんどもとりあげられていた。
本書はその試算を検討し、まとめたもので、
著者である増田氏は「日本創成会議」の座長をつとめられている。
896といえば、日本全体の約5割の自治体にあたり、
そのうち人口が1万人をきる523市町村について、
とくに「消滅の可能性が高い」と予想している。
「若年女性」がへるとなぜ問題かといえば、
もちろん子どもが生まれなくなるからで、
子どもが生まれなければ その社会は消滅するしかない。
これまでみえないふりをしつづけてきた人口減少問題に、
日本はどうたちむかえばいいのか。
「まずは、政治、行政、住民が事実をきちんと認識することが大切である。
すべてはそこから始まる」
と増田氏はいわれる。
「日本の人口は確実に減少する。(中略)
すべての市区町村が人口を増やすことはもはや不可能であり、
むしろ、すべての市区町村が人口を減らすと考えたほうがよい。
そのなかで、医療や交通、教育といった生活に必要なサービスをどう維持していくか」
「『人口減少』は避けられない。であれば、
これを与件として希望ある未来を築くのが、
現世代の私たちに課せられた使命である。
今なすべきは、人口の『急減』、ひいては『極点社会』の出現を回避し、
人口減少のスピードを抑えること、
そして豊かな生活が営める社会への道筋をつけることである。
それは、ひとえに私たちの選択にかかっている」
日本の出世率は、2005年に1.26までおちたが、その後もちなおして
2012年には1.41まであがっている。
しかし、だから人口がまたふえるかというと、そう単純ではない。
短期的には、出産適齢期の女性の数がこれからもへっていくのだから
人口がふえるのはずっとさきのことになる。
「出世率はこれからも上がるだろうが、出世自体は減っていく」
「仮に2030年に出世率を2.1まで回復させることに成功したとしても、
人口減少が止まるのは60年後」
というから、増田氏がいわれるように、
人口減少はさけられないという前提にたち、
そこからどうするかを国、市町村、企業が かんがえていくことになる。
もちろん国民ひとりひとりの意識も大切で、
これまでとおなじサービスは要求できないと、覚悟したほうがいい。
わたしは、急激に高齢化がすすむことばかりに気をとられ、
「少子」についてはあまり問題だとおもっていなかった。
わかい世代が子どもをもちたいとおもわない社会なのだから、
自業自得というか、しょうがないことであるし、
それぞれの夫婦がきめることに、まわりがとやかくいえないだろう、
というかんがえからだ。
人口がへるのは、そんなにわることばかりじゃないかも、とさえおもっていた。
しかし、子どもをもちたくないのではなく、
子どもをのぞんでいるのに、事実として子どもが生まれない、
と とらえたほうがいい。
いったいなぜそんな状況がつづいてしまったのか。
わたしがすむ島根県では、若年女性が5割以上減少する市町村が
全体の8割をこえると予想されている。
IターンやUターンの成功例としてもちあげらえている隠岐諸島でさえ、
すべての町村が「消滅の可能性が高い」と位置づけられた。
老人がおおいのなら、医療や介護に職をもとめたらよさそうだけど、
その老人さえ 地方ではこれからへっていくといい、
老人にたよっていた産業はのきなみだめになって、
わかものは都会にでるしか選択がなくなっていく。
地方はうまくいかなくても、東京は大丈夫だろう、なんてことはない。
「東京圏は2040年までに現在の横浜市の人口に匹敵する『388万人の高齢者』が増え、(中略)
医療、介護における人材不足は『深刻』を通り越し、『絶望的』な状況になる」。
そして、地方から医療・介護の人材をすいあげるので、地方はますます人口がへり、
東京にながれたおおくの労働力は、子どもをそだてることもなくきえてゆく。
「地方の人口が消滅すれば、東京への人口流入がなくなり、
いずれ東京も衰退する」
東京をどうにかしないと、人口減少にはどめがかからない。
これからの日本はいったいどんな社会にすすんでいくのか。
よんでいると、あまりにも深刻な状況すぎて
理解と想像力がついていかない。
無責任にひらきなおるわけではないけど、
こわいものみたさで ながいきしたくなってきた。
スポンサードリンク