2014年11月14日

柚木麻子さんにひかれて『シュガータイム』(小川洋子)をよむ

『シュガータイム』(小川洋子・中公文庫)

柚木麻子さんが「作家の読書道」でこの本についてはなしていた。
http://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi120_yuzuki/20111116_3.html
「大食いになってしまう女の子」というのでおもしろそうだ。

主人公の女性に あるときから異常な食欲がおとずれる。
いつまでもたべつづけてしまうので、ふんぎりをつけるために、
彼女はなにをたべたのか 日記につけはじめる。
ふんぎりというのは、もうそれくらいでたべるのはおしまいにする、という
くぎりのことだ。
日記にむかえば、それ以上はたべないで
あとはなにを どれだけたべたかという記録の段階にはいる。
記録、といっても、やせようとしての レコーディングダイエットではない。
日記にかきだすことで、もういちどその日にたべたものをあじわえることに
気づいたからだ。
「几帳面にゆっくりと、食べ物の名前を書き付けていった。
そうすることでやっと、
その日一日のわたしの食欲は完結した」

たとえば4月22日(火)にたべたものは、
・フレンチトースト4切れ(シナモンをかけすぎた)
・セロリのさらだ 醤油ドレッシング
・ほうれん草のココット
・ハーブティー(口に残ったシナモンの香りを消すために)
・草加せんべい5枚(ハーブの匂いを消すために)
・ドーナツ7個
・キムチ150グラムくらい(ドーナツが甘すぎて胸焼けしたから)
・フランスパン1本(口の中がひりひりしたから)
・ハヤシライス2杯
・フライドチキン8本
・ソルトクラッカー1箱
・あんずジャム1口

「わたし」がつきることのない食欲をもついっぽう、
弟のからだは成長をとめてしまったままだ
(子ども時代のメッシ選手の病気みたいに)。
恋人の吉田さんは、誠実だけどなにかわけがありそうで、
どんな問題をかかえているのか、「わたし」にはなしてくれない。
「わたし」はこれだけの量をたべても まったくふとらない。
大量のかいものに必要だったはずの お金についてもかいてない。

ものがたりのなかに、いろいろな記号がちりばめてある。
これは、わたしが苦手とする純文学作品だ。
わたしには、それらがなにを意味するのかわからない。
それでもさいごまでよめたのは、
おもしろそうにすすめている柚木さんのおかげだ。
『シュガータイム』の感想として、
「すごく可愛らしくて、おいしそうで。
卵とバターの匂いに満ちた小説でした」
とある。
ちりばめられた記号の解釈ができなくても、
小説の雰囲気をつかめたらそれでいいや、と気がらくになる。
柚木さんは、その本になにがかいてあるのかの、本質的な部分をのがさない。
ややこしいはなしでも、自分が興味のもてる
いまふうな意味にサッと とらえなおして おもしろがる。

「バルザックだったと思うんですが、
修道院あがりの娘を嫁にするのはヤバイ、と言っているんです。
バルザックって有吉弘行みたいなことを言う人だと思うんですけれど、
修道院出身の女同士は本当におしゃべりで、
夫に対する感謝の念がないぞ、って。
ゴンクール兄弟も
『あいつらは何も学んでいないくせに、
なんでも知っている』と言っている。
それって修道院だけじゃなくて
女子校のすべてをついているなと思って、
それで卒論のテーマが決まりました」

「あいつらは何も学んでいないくせに、
なんでも知っている」
いうほうも、いわれるほうもすごいけど、
そんなセリフを記憶する柚木さんも いいところをみている。

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posted by カルピス at 22:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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