2015年02月03日

『駄作』(ジェシー=ケラーマン)めちゃくちゃややこしいけど たくみなプロット

『駄作』(ジェシー=ケラーマン・ハヤカワ文庫)

うれない作家、ブフェファコーンは、
わかいころ本を1冊だしたきりで、あとはなかずとばず。
もう、あたらしい小説をかくちからはなく、
いまはちいさな大学で創作をおしえている。
ブフェファコーンの友人であり、
ベストセラー作家のビルが事故でなくなった。
ブフェファコーンは、追悼会に出席したおり、
ビルがかきかけていた原稿をたまたま手にいれる。
すこし手なおしして出版社にもちこんだところ、
これがとんでもないヒット作になってしまった・・・。
ネタばれだけど、これぐらいばらしてもぜんぜん大丈夫なくらい、
この作品は複雑にはなしがからまっていく。

ビルの奥さんといっしょに食事をしたとき、

「これはなんだ?チキンサラダ?」ブフェファコーンが尋ねた。
「フォアグラよ」

がおかしい。
ブフェファコーンは、そんなショボい中年男性なのだ。
そこそこの正義感があり、わるいやつではなく、
作家としての実力はない。
ただあまりにもフツーな男であるだけ。
そんなブフェファコーンが、ヒット作をうんだがばかりに
ややこしい状況にまきこまれていく。

本編だけで559ページもある あつい本なのに、
ほんの数ページでつぎつぎと章がかわり、あたらしい展開にうつっていく。
正直いって、はなしのながれをおいかけるのがせいいっぱいで、
全体を把握できない。
あまりのへんてこさに、とちゅうからずっとあきれていた。
まえにでてきた登場人物が、あとになって とんでもない役で顔をだす。
翻訳者である林香織氏は、ものすごくはなしが二転三転するので、
正確に訳しているかどうか、不安にならなかったろうか。
そんなめちゃくちゃなストーリーなのに、
さいごまでおもしろくよませるのだから すごい。
ラストはまた、それまでとはまったくちがう世界にはいる。
なんなんだ、この本は。

冒頭にあげられている「ニューヨーク・タイムズ」のブックレビューに
「ド・ヴァレーのプロットは、いつもひねりが効いていて・・・」とあった。
ひさしぶりにプロットということばを意識する。
そうだ。プロットとしかいいようがない。
この本は、プロットでよませる本なのだ。

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posted by カルピス at 14:59 | Comment(0) | TrackBack(1) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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『駄作』 ジェシー・ケラーマン (著), 林香織 (翻訳)
Excerpt: 「ジェシー・ケラーマン」の長篇スリラー(パロディ?)作品『駄作(原題:Potboiler)』を読みました。 [駄作(原題:Potboiler)] 「本書には奇想天外な展開があることをあらかじめ警告し..
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