うれない作家、ブフェファコーンは、
わかいころ本を1冊だしたきりで、あとはなかずとばず。
もう、あたらしい小説をかくちからはなく、
いまはちいさな大学で創作をおしえている。
ブフェファコーンの友人であり、
ベストセラー作家のビルが事故でなくなった。
ブフェファコーンは、追悼会に出席したおり、
ビルがかきかけていた原稿をたまたま手にいれる。
すこし手なおしして出版社にもちこんだところ、
これがとんでもないヒット作になってしまった・・・。
ネタばれだけど、これぐらいばらしてもぜんぜん大丈夫なくらい、
この作品は複雑にはなしがからまっていく。
ビルの奥さんといっしょに食事をしたとき、
「これはなんだ?チキンサラダ?」ブフェファコーンが尋ねた。
「フォアグラよ」
がおかしい。
ブフェファコーンは、そんなショボい中年男性なのだ。
そこそこの正義感があり、わるいやつではなく、
作家としての実力はない。
ただあまりにもフツーな男であるだけ。
そんなブフェファコーンが、ヒット作をうんだがばかりに
ややこしい状況にまきこまれていく。
本編だけで559ページもある あつい本なのに、
ほんの数ページでつぎつぎと章がかわり、あたらしい展開にうつっていく。
正直いって、はなしのながれをおいかけるのがせいいっぱいで、
全体を把握できない。
あまりのへんてこさに、とちゅうからずっとあきれていた。
まえにでてきた登場人物が、あとになって とんでもない役で顔をだす。
翻訳者である林香織氏は、ものすごくはなしが二転三転するので、
正確に訳しているかどうか、不安にならなかったろうか。
そんなめちゃくちゃなストーリーなのに、
さいごまでおもしろくよませるのだから すごい。
ラストはまた、それまでとはまったくちがう世界にはいる。
なんなんだ、この本は。
冒頭にあげられている「ニューヨーク・タイムズ」のブックレビューに
「ド・ヴァレーのプロットは、いつもひねりが効いていて・・・」とあった。
ひさしぶりにプロットということばを意識する。
そうだ。プロットとしかいいようがない。
この本は、プロットでよませる本なのだ。
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