2015年03月23日

『火星の人』(アンディ=ウィアー) 火星で1年半いきのびるには

『火星の人』(アンディ=ウィアー・小野田和子:訳・ハヤカワ文庫)

どんな死に方はしたくないか。
毒ヘビにかまれる。
ライオンにたべられる。
水死。
飛行機事故。
いろいろと、できればさけたい死に方があるけど、
宇宙にひとりとりのこされるのは
かなり上位にくるのではないか。
もし自分が火星にひとりですごすことになったら、
どうすればよくて なにができるのか。
『火星の人』は、まさにそんな場面からはじまる。

ワトニーはアクシデントから火星にひとりとりのこされてしまう。
つぎに探索隊がやってくるのは4年さきであり、
しかも3200キロもはなれた地点だ。
外界との通信はとざされており、
NASAはワトニーが生きていることをしらないし、
生きのびるための情報をえることもできない。
どうかんがえても絶望的な状況だけど、
ワトニーは状況を整理し、のこされた1年分の食料で、
どうしたら4年間生きびられるかを工夫する。

これは火星でのサバイバル小説だ。
生きるのに必要な水・空気・食料をどう確保するか。
地球とふたたび連絡をとりあうのになにが必要か。
火星という、地峡とはまったくちがう環境のもとで、
さまざまな問題がつぎつぎにもちあがってくる。

たとえば水は、居住空間にそなえてある量ではたりないので、
自分でつくりださなくてはならない。
「幸いなことに、レシピはわかっているー水素を用意する。そこに酸素を加える。そして燃やす。ひとつずつ準備していこう」
酸素の確保には
まず手始めに二酸化炭素を集めて、高圧容器にためる。燃料プラントにハブから電気を供給してやれば、1時間あたり0.5リットルの液体二酸化炭素が無期限に手に入る。10ソル後には125リットルの二酸化炭素ができていて、それを酸素供給器に入れてやれば125リットルの酸素ができる。
それだけあれば250リットルの水がつくれる。ということで、酸素プランは完成。
化学記号がたくさんでてきて、なんのことかさっぱりわからない。
わからないけど、ワトニーがおおくのアイデアをおもいつき、
実行にうつす能力にたけているのはわかる。
ワトニーは絶対にあきらめない。
最悪だ。もう死ぬ!
よし、おちつこう。絶対なんとかなる。
をなんどもくりかえしてワトニーは生きのびていく。

ワトニーは必要なカロリーをおぎなうためにジャガイモもそだてる。
ジャガイモをそだてるにも、こまかな計算がもとになっている。
ぼくはアレス4がくるまでのあいだ、生き残りをかけて農作業に精を出し、毎日1100キロカロリーつくりださなくてはならないのだ。(中略)
62平方メートルの農地で1日につくりだせるのは約288キロカロリー。したがって、生きのびるためには現行計画の4倍近い量が必要ということになる。
土はある。水はつくった。
肥料には、火星の土に排泄物をまぜ、それに地球の土をかける。
地球の土のなかには何10種類ものバクテリアがすんでいるので、
死んだ土を生きた土にかえてくれるからだ。

しかし、ジャガイモをそだてたからといって、
ジャガイモだけをたべつづけられるものだろうか。
補助栄養剤により、ビタミンとタンパク質は確保できるものの、
必要なカロリーをとりこむためには、いちにちに10個のジャガイモをたべなければない。
火星での生きのびることは、すべて計算をもとになりたっているので、
お腹をこわしてカロリーを吸収できなければ、計画がくるってくる。
ワトニーが生きのびれるかどうかは、
ゆたかなアイデアと科学的な知識だけでなく、
じょうぶな胃腸かどうかにもかかっていた。

ワトニーは、とにかく生きのびることで精一杯だ。
生きるだけでも、まるでいじわるをするみたいに
おもいもしない問題がでてきて、あたらしい課題をワトニーにつきつける。
ワトニーは、ひとつずつ難題をクリアーし、
救出用の船にたどりついた。
しかし、そこでもまた絶体絶命の状況がまっていた。

ワトニーをすくいだすために、
おおくの関係者が膨大な時間をついやして計画をたて、
必要な物資と費用も天文学的な数字にのぼる。
なぜそれだけのコストを人類はワトニーにみとめたのか。
ぼくを生かすためにかかったコストは何億ドルにもなるはずだ。ぼかな植物学者ひとりを救うために、なんでそこまで?
うん、オーケイ。ぼくはその答えを知っている。一部はぼくが象徴しているもののためだろうー進歩、科学、そしてぼくらが何世紀も前から描いてきた惑星間宇宙の未来。だが、ほんとうのところは、人間はだれでも互いに助け合うのが基本であり、本能だからだと思う。
いいことばだ。ほんとうにそうであってほしい。
本書は『おすすめ文庫王国2015』で2位(SF部門では1位)にえらばれている。
SFによわいわたしにも、さいごまでおもしろくよめた。

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posted by カルピス at 12:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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