ほとんど客がこない仕事場が理想だ、
みたいなことをかかれていた。
わたしがかんがえているのとおんなじだ。
ちゃんと事務所につめながら、
やらなければならない仕事は極端にすくなく、
相談にくる客もまずいないところ。
優雅に新聞をひろげながらお茶をのみ、花に水をやる。
探偵事務所を名のったりすると、
まちがえてお客さんがはいってくるといけないので、
それらしい名前でありながら、
いかにも人畜無害な名前をつける必要がある。
「冥王星方面観測研究所」という名はどうだろう。
そんなところにひとがきそうもないし、
もしこられたときにも、天体望遠鏡ひとつあれば説明がつく。
梅田さんの本『ウェブ時代をゆく』(ちくま新書)を確認してみたら、
ただのんびりした時間をすごすための探偵事務所ではなく、
ある専門性が人から頼りにされていて、人からの依頼で何かが始まり急に忙しくなるが、依頼がないときは徹底的に暇であることへの指向性だった。
「徹底的に暇」ばかりが記憶にのこったようで、
わたしはビミョーによみちがえている。
わたしがのぞむような事務所は、あんがいおおいのではないか。
税金対策で、もうける必要はなく、
とにかく会社のかたちをとっているのが目的の会社や、
なにかヤバイ仕事のかくれミノになってる会社など。
そうした会社を裏社会が必要としているので
ミステリーをよむとよくでてくる。
ブラック企業など、やたらとはたらかせる会社が問題になるいっぽうで、
仕事をしないことが仕事、みたいな会社もちゃんとあるのだ。
それどころか、ちゃんとした会社でも、
たいして仕事をしてない職員がすくなからずいるのは、
おおくのひとが体験していることだろう。
よくいわれるように、80%の仕事は20%の職員がやっているそうだから。
とはいえ、そうした職場はいっけん理想的にみえながら、
健全なわたしの精神にはたえられそうにない。
「冥王星方面観測研究所」はさすがにひどいので、
もうすこし「すき」を全面にだした事業所にしたほうがいい。
梅田さんはすきでたまらないことを仕事にするために、
「けものみち」をゆくよう提案している。
ネットという高速道路をつっぱしったのにちには 大渋滞がまっているものの、
そうなったら高速道路をおりて「けものみち」をゆけばいいという。
「けものみち」というとこわそうだけど、
「自信とちょっとの勇気と対人能力と『一人で生きるコツ』」
があれば大丈夫なのだそうだ。
心配しなくても、わたしがやればホームズみたいな
徹底的に暇な事務所になりそうだから、
安心して「けものみち」をあるいていけばいいのかもしれない。
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