2015年12月14日

『おすすめ文庫王国 2016』

『おすすめ文庫王国 2016』(本の雑誌社)

『おすすめ文庫王国』はことしで17年目になるといい、
毎年この時期のたのしみとなっている。
きょねんは、ベストテンを参考に4冊かった。
編集の基本路線がかわらないので、
まえの年の号をひっぱりだしてみると、
文庫界のうつりかわりがよくわかる。
わたしがすきな特集は、
文庫本の出版社をJリーグにたとえる「文庫Bリーグ」だ。
いちねんをつうじてのつよさ・いきおいを分析し、
だめなチームは下のリーグに降格する。
ことしの1位は『その女アレックス』が大活躍した文春文庫で、
2年ぶりの優勝と、安定したちからをみせている。

そういえばベストテンに
『その女アレックス』がないなーとおもったら、
この本は2014年に出版されていた。
では きょねんの『おすすめ文庫王国』でえらばれたかというと、
座談会で名前があがっただけだ。
ベストテンえらびは ひとつのおまつりと
わりきったほうがいい。
そうやってえらばれた本が
どうどうと「本の雑誌ベストテン」のオビをつけるのだから、
本をかったひとが ベストテンにえらばれた経緯をしったら
おどろくのではないか。

ことしおもしろかった企画は、
「世代別読んどく文庫はこれだ!」。
たとえば30代にはこの本が必読で、
40代だと◯◯のほうがよくて、というふうに、
世代別のおすすめ本をとりあげている。
担当者の年齢からか、とくに50代がこまかく分析してあり、
それによると50代のキーワードは「しみじみ」なのだそうだ。
わたしは当事者だから その気もちがとてもよくわかる。
もうわかくはなく、食欲も性欲もかすかにのこる程度で、
もうすぐやってくる老いがなんとなく不安な50代は、
たしかにむつかしい時期であり、
すくってくれる本があればずいぶんたすかる。
この記事ですすめている『夢果つる街』(トレヴェニアン)は、
もっているのにまだ「つんどく」のままだった。
さっそくお世話になりたい。

10代には北杜夫の『どくとるマンボウ青春記』が
つよくすすめられている。
わたしは13歳のころにこの本をよんだけど、
それにより、10代をのりきる適切なちからが
やしなわれたかどうか、よくわからない。
ただ、本の世界にすんなりはいれたのは、
たしかにこの本のおかげかもしれない。

都内大型2書店でのうりあげを1位から100位までならべた
「文庫年間売上げ」の座談会では、
文庫がうれない理由について

丸 あと、本が好きで今までいっぱい買ってくれていた
  おじいさんおばあさんが、
  さらにおじいさんおばあさんになってしまって、
  本が読めなくなってしまった可能性がありますね。
三 活字をどんどん大きくしても追いつかない。
丸 お客さんの世代交代の時期なんじゃないですかね。
  だから今、ライト文芸がすごいじゃないですか。
 (丸:丸善・三:三省堂)

と、老眼による世代交代が話題になっている。
おもしろい指摘だ。

もうひとつ、SNSやネットのレビューの影響にもふれている。
「しみじみ」よりも強烈なインパクトをのこす作品が、
SNSやレビューにはつよいかもしれない。
『その女アレックス』がうれたのは、
そんなネット社会の特徴がいかされたからだろうか。

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posted by カルピス at 16:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本の雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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