『おすすめ文庫王国』はことしで17年目になるといい、
毎年この時期のたのしみとなっている。
きょねんは、ベストテンを参考に4冊かった。
編集の基本路線がかわらないので、
まえの年の号をひっぱりだしてみると、
文庫界のうつりかわりがよくわかる。
わたしがすきな特集は、
文庫本の出版社をJリーグにたとえる「文庫Bリーグ」だ。
いちねんをつうじてのつよさ・いきおいを分析し、
だめなチームは下のリーグに降格する。
ことしの1位は『その女アレックス』が大活躍した文春文庫で、
2年ぶりの優勝と、安定したちからをみせている。
そういえばベストテンに
『その女アレックス』がないなーとおもったら、
この本は2014年に出版されていた。
では きょねんの『おすすめ文庫王国』でえらばれたかというと、
座談会で名前があがっただけだ。
ベストテンえらびは ひとつのおまつりと
わりきったほうがいい。
そうやってえらばれた本が
どうどうと「本の雑誌ベストテン」のオビをつけるのだから、
本をかったひとが ベストテンにえらばれた経緯をしったら
おどろくのではないか。
ことしおもしろかった企画は、
「世代別読んどく文庫はこれだ!」。
たとえば30代にはこの本が必読で、
40代だと◯◯のほうがよくて、というふうに、
世代別のおすすめ本をとりあげている。
担当者の年齢からか、とくに50代がこまかく分析してあり、
それによると50代のキーワードは「しみじみ」なのだそうだ。
わたしは当事者だから その気もちがとてもよくわかる。
もうわかくはなく、食欲も性欲もかすかにのこる程度で、
もうすぐやってくる老いがなんとなく不安な50代は、
たしかにむつかしい時期であり、
すくってくれる本があればずいぶんたすかる。
この記事ですすめている『夢果つる街』(トレヴェニアン)は、
もっているのにまだ「つんどく」のままだった。
さっそくお世話になりたい。
10代には北杜夫の『どくとるマンボウ青春記』が
つよくすすめられている。
わたしは13歳のころにこの本をよんだけど、
それにより、10代をのりきる適切なちからが
やしなわれたかどうか、よくわからない。
ただ、本の世界にすんなりはいれたのは、
たしかにこの本のおかげかもしれない。
都内大型2書店でのうりあげを1位から100位までならべた
「文庫年間売上げ」の座談会では、
文庫がうれない理由について
丸 あと、本が好きで今までいっぱい買ってくれていた
おじいさんおばあさんが、
さらにおじいさんおばあさんになってしまって、
本が読めなくなってしまった可能性がありますね。
三 活字をどんどん大きくしても追いつかない。
丸 お客さんの世代交代の時期なんじゃないですかね。
だから今、ライト文芸がすごいじゃないですか。
(丸:丸善・三:三省堂)
と、老眼による世代交代が話題になっている。
おもしろい指摘だ。
もうひとつ、SNSやネットのレビューの影響にもふれている。
「しみじみ」よりも強烈なインパクトをのこす作品が、
SNSやレビューにはつよいかもしれない。
『その女アレックス』がうれたのは、
そんなネット社会の特徴がいかされたからだろうか。
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